Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P39 脱水症状

 他の動物と同じように、ヘビも脱水症状をおこすことがある。たいていの場合、その原因は飲み水が不足していることや、ケージ内の温度が常に高いことである。ケージに使われている素材や床材が、脱水症状をひきおこす原因となる場合もある。未加工の木材をそのまま使用しているケージは、吸湿性が高いことで知られている。また、そうしたケージはとがった部分が多く、消毒しにくいこともあり、飼育には不向きである。トウモロコシの穂軸のような床材も吸湿性が高い。そういうわけで、飼い主は木製のケージや水分を吸収する床材をやめて、ケージ内が高温にならないように気をつけること。また、たいていのヘビの場合には定期的に水を与え、それ以外の場合には常に水を用意しておくこと。ヘビを入れるケージの素材は通気性がなく、なめらかな面をもったもの…ガラス、プラスチック、金属、メラミン樹脂加工がしてある木材などが好ましい。どんなヘビにはどんな床材が適しているか、他の飼い主たちの意見も参考にするとよい。
 もしヘビが (特に小型ヘビの場合)ひどい脱水症状をおこしているようなら、すぐに獣医のところに連れていくこと。ひどい脱水症状の場合、皮膚にできた皺をやさしく引っ張ると、ゆっくりと元に戻るか、全く戻らないこともある。その場合、緊急水分補給やチューブによる栄養補給が必要になるかもしれない。すぐに獣医の診察を受けられないような時には、低濃度のPedialyteのような電解質溶液を胃管に注入するとよい。その際には、Pedialyteを同量の水で薄めて50%の希釈液を作り、ヘビの体重100gに対して約2〜3ミリリットルを一日一回注入し、それを数日間あるいは獣医の診察を受けるまで続ける。Reptilaidという新商品は、脱水症状のヘビのために処方された薬であり、これを使うのもいいだろう。獣医なら、ヘビの体重1kgに対して約20ミリリットルの殺菌した電解質溶液を腹腔内に一日一回注入し、それを数日間おこなうだろう。注意点:腹腔への注射は内臓を避けて注意深くおこなわなければならない。肺を避けるために尻尾の先から体長の三分の一ほど戻った場所にだけ注射すること。一番よく使われているのはラクトリンゲル液 (乳酸加リンガー溶液)であるが、理論的にはジャーコウ溶液のほうが優れている。ジャーコウ溶液とは、0.45%の塩に2.5%のデキストロース2とラクトリンゲル液1を混合させたものである。ひどい脱水症状にあるヘビは心臓カテーテルを使って治療できることもある (1992年、メイダーの報告による)。
 常にヘビを温めておくこと。しかし、温度を上げれば脱水症状をおこす可能性も高くなることは忘れないように。脱水症状をおこしたヘビと非常にやせ細ったヘビ (つまり飢餓状態にあるヘビ)とを区別することは難しい場合がある。拒食症体重減少によってひきおこされた問題については、別の章で論じている。

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