Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P41 皮膚炎

 やけど、咬み傷、すり傷、脱皮時に残ってしまった皮、皮膚の腫瘍、寄生虫、水分を過度に含んだ床材、多湿、不潔なケージ。以上は全て、細菌が侵入して、皮膚炎 (皮膚の感染症)をひきおこす素因となる可能性がある。ヘビの皮膚炎のほとんどは、細菌が原因でおこるのではなく、そこに細菌がたまった状態だと言える。獣医はこうした感染症を二次感染と呼び、前述したような素因を探すことになる。一度細菌が定着してしまうと、それらは病気の主要素となってしまうので、感染した動物を救うために治療する必要がある。血液内に抗生物質を投与しないと (通常は注射を使う)、細菌は急速に拡大し、腫瘍、口内炎、肺炎、小胞炎 (体内の奥にある細胞の感染症、その箇所が膨らんでしまう)、敗血症 (血液の感染症)、死などをひきおこす。先に指摘したとおり、糞の培養や感受性検査をおこなって、適切な抗生物質を決定し、理想的には、主原因を特定して (必要なら生体検査をおこない)、原因を除去しなければならない。
 皮膚炎は菌類、虫、さらにはウイルスの侵入によっても発症する可能性がある。 (今のところ、ヘビの皮膚炎からウイルスが検出されたことはない。しかし、トカゲでは一つのウイルスが確認されている)虫やダニについては、適切な駆虫薬を使って治療可能であるが、それらに関しては[寄生虫]の章を参照してほしい。腫瘍の疑いがある場合は、手術して取り出す必要がある。脱皮して残った皮やその他の要因 (床材など)も除去しなければならない。真菌性障害や真菌性感染の場合は、保温、乾燥、そして、Betadineのようなポビドンヨードを毎日つけることを心がける。もしくは、Tinactin、Micatin、Veltrimのような抗菌軟膏を組み合わせて使用してもいいだろう。筆者たちは、melaleuca (コバノブラッシノキ)の抽出液を薄めたものを使って治療に成功したことがあったが、これはさらに研究する必要があるだろう。現在までのところ、哺乳類や他の爬虫類で使われている全身性の抗菌薬で、ヘビにも有効な薬は発見されていない。NystatinとPulvicinを試したことはあるが、ヘビには効かなかった。
 真菌性感染も細菌性感染も、治るまでには、毎日治療を続けて、一ヶ月以上かかる場合がある。筆者たちは通常、Betadine希釈液に浸したペーパータオルをケージの底に敷き、ヘビを30〜60分ほど入れておく。そして、ヘビを取り出して、よく洗い、炎症部分に抗菌軟膏を塗っている。
 細菌による感染の場合、Betadineの入浴治療だけ、あるいは入浴治療の後、局所用抗菌薬を塗っただけでも、すぐれた治療効果を示した。時には、局所用抗菌薬だけでも効果のある場合がある。Silvadineクリーム1%は、爬虫類によく効く局所用抗菌薬である。最近はこの薬を使うのが一般的になっている。Polysporin軟膏もよく効く薬である。他の感染症の場合でも同じことだが、温度を上げるのはいい考えである。しかし、温度を上げれば、水分の蒸発も増えるので、常にヘビが水を利用できるようにしておかねばならない。また、人工芝を使うと、ヘビの怪我の治療に役立つということも覚えておくとよい。人工芝の場合、ヘビの体の下に、新鮮な空気の流れができるからだ。軽度の皮膚炎にかかったヘビを清潔で乾燥した人工芝のケージに入れたところ、全く抗生物質を使わなくても、治ってしまった例が数多くある。
 環境を改善したり局所治療をおこなっても、治療効果があらわれない場合は、獣医の診察を受け、皮膚炎の原因を特定してもらうこと。獣医は生体検査や糞の培養や感受性検査をおこない、皮膚炎を治療する最善の方法を決め、どの抗生物質を使用するかを判断してくれるだろう。[爬虫類の皮膚病学について、さらにくわしく知りたい方は、ヤコブソンの報告 (1992年)やロッシーの報告 (1996年)を参照するとよい]

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