Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P61 老い

 ペットのヘビの世話が向上するにつれ、その寿命も着実に延びているようだ。1992年、スナイダーとボウラーは、さまざまな両生類と爬虫類のペットの長寿記録をリストにして発表した。ある種のペットのヘビの寿命が、現在では40歳を超えているというのはおもしろい記録である。このリストが発表された時点では、ボアとパイソンがもっとも長く生きるヘビであるようだ。あるボア・コンストリクターは40年以上生きており、あるボールパイソンは47年生きているそうだ。一方、他のヘビ (ガラガラヘビ属Crotalus、キングスネーク属Lampropeltis、ラットスネーク属Elapheなどを含む)は、30年を超えるぐらいである。これらの数字が、各グループのうち何%に適用できるのか、ペットとしての適応能力がどの程度関係しているのか、それとも、自然の寿命をそのまま反映した結果なのかどうかということは、現在のところわからない。また、他の動物の場合と同じく、体の大きさと寿命との間にも関係があるようだ。いずれにしろ、長生きするペットのヘビの数は増加しているので、こうした年をとったヘビの世話の仕方や、発生しやすい問題などを検討するのも無駄ではないと思う。
 一般的に言って、少なくとも15年以上生きたヘビは、かなりスリムであり、肥満体は一匹もいない。ヘビの場合も、哺乳類と同じように、肥満が多くの病気 (心臓病、腫瘍の発生率の増加など)と関係していると考えて間違いないだろう。だから、ペットのヘビには餌を与えすぎないようにしてほしい。ヘビの体の横面に縦の皺ができれば、それはヘビが肥満しているというしるしである。もしこの皺を確認したら、ケージを大きくして、餌を小さく、回数を少なくするようにするとよい。何度も産卵を繰り返してきたヘビは、一旦繁殖のペースがおちると、肥満になりやすい傾向がある。そのヘビが、今まで通りのペースで餌を与えるようにというアドバイスとともに、新人の飼い主に買われていった場合は特にその傾向が強くなる。
 年老いたヘビの多くで、腎臓障害が観察されている。これはアミノグリコシド系抗生物質の過剰投与や慢性的な脱水症状と関係している場合もあるが、加齢による変化が一番の原因であろう。年老いたヘビには、いつでも水が利用できるようにしなければならず、また、ケージも温めすぎてはいけない。年をとって成長速度が遅くなったヘビには、大きな餌を与えたり、何度も餌を与える必要はない。こうしたヘビに何度も餌を与えると、不必要な脂肪を増やし、余分な窒素を排出しなければならないので、腎臓に余計な負担をかけることになる。
 年老いたヘビの多くでは、白内障も観察される。加齢と関係した白内障は命にかかわるようなものではない。たいていのペットのヘビにとっては、餌を食べる時に視力はあまり重要ではないからだ。死んでいる餌を与えれば、体力の衰えたヘビでも、触覚と嗅覚を駆使して餌を手に入れることができるだろう。しかし、まず獣医と相談して、白内障になりうる他の原因 (たとえば糖尿病)を取り除いておくことをお薦めする。獣医なら血液検査をおこなって、基礎代謝に問題がないかどうか診てくれるだろう。ヘビの老化問題はまだ始まったばかりである。そのうち、もっと具体的なアドバイスができるようになるだろう。しかし、現在のところは、的確な判断力をはたらかせて、過ちをおかさないようにするしかない。
 最後に、興味深い事実を指摘しておこう。筆者たちは年老いたアルビノのヘビというのを見たことがない。これはただの偶然だろうか、それとも、アルビニズム (先天性白色症)と寿命が短いこととの間には何か関係があるのだろうか? 1992年、ファンク氏は、アルビノ・コーンスネークElaphe guttataには、他のコーンスネークと比較して、脂肪性腫瘍がはるかに多く見られると報告している。これはペットとして飼育されているせいで、大量に餌を摂取する習慣が維持されていることによる結果とも考えられるが、あるいは、アルビノという特定の変異体に関係した傾向なのかもしれない。

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