Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P117 発作、震え、協調運動障害、神経障害の症状
 筆者がよく見るヘビの神経障害の症状は、発作、震え、協調運動障害、衰弱、スターゲイジング (常に頭を横に傾けて、上のほうを見ている)、失明、弛緩性麻痺などがある。ヘビの場合、こうした症状は普通、次の三つのうちのどれかと関係している。それは感染、毒、代謝障害 (もしくは代謝欠乏)である。頭部あるいは脊椎の傷、また過熱なども神経症状をひきおこす原因となる場合がある。
 発作、震え、協調運動障害のように明らかな神経症状を示す一番よくある原因は、脳細胞がひどい感染をした、もしくは感染により毒が放出され脳が影響をうけたということである。肺炎や口内炎といった他の感染症状がないかどうか、特に気をつけて見なければならない。細菌感染の場合は、治療効果があるが、ウイルスやアメーバ感染の場合は、治療が困難である。VEBSウイルス (ボイド・スネークのウイルス性脳炎)も神経症状をひきおこすが、効果的な治療法はない。殺虫剤に使われているような毒 (Vaponaのようなダニ駆除薬を誤って使用した場合も含む)、絵の具、ある種の薬、細菌性の毒なども全て、神経障害の症状をひきおこすことがある。
 最後に、魚を食べるヘビはチアミン (ビタミンB)不足になりやすい傾向がある。ヘビに魚だけを与えて、ビタミンやミネラルを補充しないと、わずか6ヶ月間で発作がおきる場合もある。チアミン不足を予防するには、ヘビにさまざまな種類の餌を与えることである。できれば魚の匂いをつけた死んだマウスを与えるか、死んだ魚のなかにブルーアーのイースト菌タブレットのかけらを入れて与えるといいだろう。もしペットのヘビがひどい神経症状を示して発作をおこすようになったら、Tech America社製の商品Multi B Complexを0.05〜0.1cc筋肉注射するとよい。この薬を使うと、通常は数時間以内に症状がおさまるだろう。治療方法と回復の予後診断は、神経症状の程度によって大きく異なる。細菌感染の場合は、適切な抗生物質でうまく治療できることもあるが、ウイルス性あるいはアメーバ性脳炎の場合は、生き残るヘビはほんのわずかである。
 毒物の治療にあたっては、その飼育環境からヘビを連れ出すとともに、毒物をも除去しなければならない。ヘビを石鹸水で洗うのも有効な方法であろう。有機リン殺虫剤の場合には、呼吸不全のところで示したように、体重1キログラム当たり0.02〜0.04ミリグラムのアトロピンを使用すると効果がある場合がある。この治療をした後、病気のヘビに水を与え、飼育環境の温度を上げるように。メトロニダゾールもイベルメクチンも、適切な用量を超えて過度に与えると、神経症状をひきおこす効果があるので気をつけなければならない。絵の具やダニ駆除剤を使用する時も気をつけるように。ヘビのケージの通気性がよく、完全に乾いていることを確認すること。そして、こうした商品を使用した後しばらくは、水皿を置かないように。ケージに絵の具やニスを塗って完全に乾かした後、ケージの暖房装置を高温に設定して数日間そのままにしてから、ヘビを入れるようにするとよい。熱を加えることにより、塗料の匂いが追い払われるからだ。有機塗料に含まれるポリウレタンは、ケージの暖房装置を入れた後でも、さらに匂いを発することで悪名が高い。

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