Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P121 口内炎

 ヘビにとって口内感染は非常によくあることなので、ヘビの購入前、及び、購入後もヘビの健康状態をチェックするための定期検診の一つとして、口のなかを調べたほうがよい。ヘビが異常な口の閉じかたをしていたら、それは感染を示す第一の兆候である。出血による小さな赤い点 (獣医はこれを溢血点・点状出血と呼ぶ)ができていたら、それも感染が始まったという第二の兆候である。これら二つの兆候は餌をたくさん食べた後にもおきることがある。したがって、餌を食べた直後はヘビを診察するのには不向きである。これには、餌を食べた直後のヘビに触ると嘔吐しやすいからという別の理由も含まれている。
 感染を示すもっと決定的な症状は、腫れ物、口の変色、歯と歯茎の境目にチーズのような滲出物 (ooze)が出ることなどが挙げられる。口内炎が進行すると、口のなかに大量の粘液があふれ出すことがある。これは大抵の場合、気管から液が流れ出した結果であり、肺炎にかかっている可能性もある。滲出物が薄膜状で口の裏側にしっかりと張りついているようなら、それは膜性あるいはジフテリア性の口内炎であることを示している。これはもっとも重症の口内炎であり、治療するのも極めて難しいものである。
 もし治療をおこなわないと、軽い口内炎でも数日のうちに重度のものへと進行する可能性がある。他の感染症と同じように、口内炎治療の第一歩も、環境改善と温度補給である。その後は、培養テストや感受性検査にもとづき、適切な抗生物質治療をおこなうことが望ましい。一番よくある原因はグラム陰性菌であり、当然、グラム陰性菌に効果のある抗生物質を投与するのが最適な治療法となる。
 抗生物質を投与する治療法に加え、口のなかの局所治療も必要となる。たいていの場合、局所用ポビドンヨード液が効果を発揮し、多くの場合、過酸化水素液を使ってもよい。獣医のなかには、これら二つを併用する者もいる。過酸化水素液を使うと、ポビドンヨード液が組織に浸透しやすくなり、さらに治療効果が上がると考えているからだ。筆者が使用して成功したもう一つの局所治療液は、Gentocin Opthalmic溶液 (シェーリング・プラウ社の製品)である。他にも数多くの局所治療液を使用して、それなりに成功したが、筆者の経験から言うと、これら三つの液を使えば (あるいは三つを併用すれば)、うまく治療できる。
 最近では、口内炎の局所治療に、クロルヘキシジン (2%のNolvasan無臭液)を水で20〜30倍に薄めたものを使うと、優れた効果があるそうだ (1992年、スーデマイヤーの報告による)。スーデマイヤーによると、この溶液は細菌が原因となってできた傷の多くに治療効果があると言う。また、スーデマイヤーは培養テストや感受性検査をする際には、クロルヘキシジンの検査ディスクも含めたほうがよいと提案している。局所治療液を与える時には、ヘビの口をやさしく開け、ヘビの口の上側と下側に数滴ずつたらすこと。それを口内炎の程度に応じて、一日に1回か2回おこなうこと。治療液を塗る前に、壊死した細胞を取り除いておくこと。筆者の場合、ヘビをやさしく固定しておき、なめらかな棒で口を開け、メス (刃番号#15)で壊死細胞をこすり取っている。

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