Hebidas ヘビダス  ヘビの病気マニュアル

P124 突然死

 長年飼っていて健康そうに見えたヘビが突然死んでしまうことは、飼い主にとって一番つらく不可解な出来事だろう。考えられる死因は数多くあるが、それがわかるのは検死だけである。そして、検死をおこなっても、明確な死因が特定できないこともある。[心理的な要因環境不適応の章も参照のこと]
 ペットのヘビにおける突然死のよくある原因の一つは、寄生虫が腸に侵入し、内出血と腹膜炎をひきおこしたというものである。多くの場合、定期的に糞検査と駆虫治療をおこなえば、寄生虫による突然死を予防できる。突然死のもう一つの原因は、脱水症状と腎不全である。高温かつ乾燥した環境で、常に十分な水が与えられなかったヘビは、尿酸が蓄積した結果、腎臓にダメージをおって死亡する場合がある。ある種の抗生物質を過度に投与した場合にも、腎不全をひきおこす場合がある。過熱が爬虫類を死亡させるのは、酵素を変性させ、新陳代謝を大幅に変えてしまうので、生命活動を維持できなくなるからである。また、過熱は急激な脱水症状もひきおこす。その原因は、暖房装置や温度自動調節器の故障の他、水皿が空っぽだったり、湿度ボックスがないことなどが挙げられる。
 ペットのヘビにおける心臓病は、以前に考えられていたよりも、もっと発症率の高いものであることがわかってきた。餌の与えすぎと運動不足が重なると、肥満となり、コレステロール値が増加し、心臓肥大の危険性が増える。小型ヘビの場合は、特に敗血症 (血液内に細菌が増殖する)になりやすい傾向がある。これは普通は検出されにくいが、病気が進行して、数日のうちに致命的になる場合がある。この病気はケージが不潔な状態にあることと関連している。大型のヘビも敗血症になりやすいが、感染の徴候はもっとわかりやすい。
 ビタミンやミネラルが不足すると、急性の神経症状を示す場合がある。これは通常、慢性的な栄養不良が原因となっておこる。その実例としては、魚を食べるヘビが、ビタミンBの不足により、神経症状を示す場合がある。[くわしくは、神経障害の症状の章を参照すること]
 一つの場所に長い間飼われていたヘビは、別の場所に移されると、理想的な飼育環境が整っていても、餌を食べなくなって、突然死んでしまうことがある。たいてい、その死因は内臓に細菌が繁殖し、胃腸炎や敗血症をひきおこしたというものであるが、これらは全てストレスと関係したものである。ストレスにより免疫システムが抑圧されてしまったのだ。一般的に、獣医は抗生物質を予防手段として使うことに乗り気ではないのだが、ある状況下 (新しいヘビが到着した等)においては、糞の培養結果をもとにして抗生物質の投与をおこなうと、ヘビのためになる場合がある。飼い主は全てのヘビのために (新しいヘビの場合は特に)、ストレスのない清潔な飼育環境作りを心がけなければならない。
 同じように、冬眠の直後にも突然死がおこる場合がある。動物園では、長年飼っていたヘビが冬眠直後に多数死亡し、個体数が激減したこともある。何がおきたのかというと、ヘビの免疫反応が、細菌や原生動物の急速な成長速度についていくことができず、結局、冬眠から目覚めて1週間以内に死を迎えることになってしまうのだ。もしヘビが冬眠から目覚めた後、病気や衰弱や元気のない行動を見せた場合には、メトロニダゾールとアモキシシリンを経口投与する準備をすること。また、アミカシンを注射してもよい (獣医の指示に従うこと)。これらの薬の投薬量は、別表に記載してある。ヘビを冬眠あるいは移動させる前には、糞検査・糞培養・感受性検査をおこない、その状況に応じて治療をおこなえば、こうした突然死を防ぐことができる。冬眠あるいは移動させてもよいのは、健康な動物だけである。

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