Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P197  拒食

 すでに何度も書いたことだが、ここでもう一度繰り返しておくことにしよう。ボールパイソンは時に餌を食べなくなることがある。なぜか? お腹が空いていないからだ。なぜお腹が空かないのか? それは我々にもわからない。ただ単に空かないのだ。
 あなたの飼っているボールパイソンが餌を食べなくなったら、我々のルールを思い出して、それを呪文のように唱えるといい。「健康で幸福なボールパイソンは、お腹が空いたら餌を食べる」

 ボールパイソンが餌を食べなくなったとしても、そのヘビが問題なく、健康そうで、目に輝きがあり、周囲の環境に何も手を加えていないなら、それは多分ただ単にお腹が空いていないだけだろう。

 我々のところには飼い主から毎日のように電話がかかってくる。飼い主たちはパニックになって、大金を出して購入した高級なボールパイソンが餌を食べなくなったとか、ヘビの赤ん坊が今すぐ餌を食べないと、十分成長できないので、自分が決めた繁殖計画に間に合わなくなるとかいった悩みを打ち明けてくる。そういう場合、我々はこう答えることにしている。「それがどうした。よくあることじゃないか」

 健康に問題があるなら、普通は目に見える徴候があるはずである。糞の状態が変化した、体の動きがぎくしゃくしている、今まで見たことのない変な姿勢をとる、口のなかの唾液が異常に多い、鼻孔に鼻水がある、鼻孔のまわりに乾燥した鼻水がこびりついている、排泄腔あるいはヘミペニスが外部に露出している、皮膚あるいは目に火傷・腫れ物・感染がある、呼吸が荒いといった症状である。これらの症状があれば、ヘビの健康状態が損なわれていると考えたほうがよい。もしあなたがヘビの上にボウルを落としたり、ヘビを床に落とした後で、ヘビが餌を食べなくなったら、ヘビが怪我をしていると考えたほうがいいだろう。

 一方、ヘビが幸福かどうかは、通常は飼育環境が関係している。もしあなたのヘビがずっと同じケージで餌を食べて暮らしていて、飼育環境に何も変更を加えていないのなら、幸福に関しては問題がないと言えるだろう。もしあなたが新しいタイプの餌を与えようとしていて、ヘビがそれを食べようとしないのなら、それは幸福感の問題である。あなたがケージを新しい場所に移動した後、ヘビが餌を食べなくなったら、それもまた幸福感の問題かもしれない。もしあなたが交尾の相手として別のヘビをケージのなかに入れた後、ヘビが餌を食べなくなったら、その場合は幸福感の問題かもしれないし、生殖行動に関係した食欲減退によるものかもしれない。

 我々の観察によると、餌を食べなくなる一番の原因は、温度の問題である。温度が高すぎると、ボールパイソンは(特に赤ん坊の場合は)餌を食べなくなる。我々の観察では、ヘビには餌を食べたいと思う“基準温度”があり、その温度は一匹一匹で異なっている。しかし、ほとんどのボールパイソンは(特に若い個体の場合は)、摂氏26〜27℃という比較的低い温度で一番餌を食べるようだ。時には、ヘビの活動状態を観察することで、ヘビが暑いと感じているかどうかを判断することもできる。常に動き回っているヘビは、たいてい涼しい場所を求めているものである。

 普通、空腹というのは生理的な問題である。たとえば、他のヘビのフェロモンに影響を受けて、餌を食べなくなることもある。ボールパイソンのなかには自己管理のできるものもいるらしい(少なくとも我々の目にはそう映る)。太ってきたかなとか、急に体重が増えたなと我々が感じはじめると、ほぼ時を同じくして餌を食べなくなるボールパイソンがいるからだ。普通、ボールパイソンは脱皮時、繁殖時、妊娠時には食欲がない。しかし、これらは一時的な状態にすぎない。

 めったにないことだが、何かがおかしいと思われる時(あきらかに健康で幸福で空腹のはずのヘビが餌を食べない時)には、メトロニダゾールを投与することがある(ヘビの体重1kgに対して100mgのFlagyl)。多くの場合、この投与をおこなえば、ヘビはすぐに餌を食べはじめるようになり、拒食の原因は腸内細菌だったことが判明する。

 明らかに健康で幸福であるはずなのに、長い間餌を食べずに体重が減少してしまったヘビを飼っていたことがある。そうしたヘビが死ぬと、たいていの場合、生きている間にはわからなかった健康上の問題(ガンを含む)が検死で発見されることがある。こうした場合、強制給餌をしていたとしても、彼らを苦しめていた病気を治すことはできなかっただろう。

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