Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P165  飾り

 ケージ内でヘビを飼う際には、飾りは最小限にしておくようにという強い意見がある一方、ペットのヘビにはさまざまな装飾品を与えるべき正当な理由があるという意見もある。たいていの捕食動物と同じく、ヘビもあまり活動的ではなく、邪魔が入らないかぎり、ほとんどの時間を眠って過ごしているようだ。しかし、時々は目を覚まして、ケージ内をうろつくこともある。ヘビが座ったり登ったりできるような装飾品を入れてやると、たいていのボールパイソンはその通りの行動をとる。とは言え、一見何の害もなさそうな装飾品が、ケージのなかのヘビに危険をもたらすこともある。以下にその実例を示す。

 ボールパイソンは、ある種のシェルターの他にも、滑らかなレンガや大きな敷石の上でとぐろを巻いたりするのが好きである。残念ながら、飼い主がケージのなかでこうした重量のある装飾品を使っている場合、ケージを清掃しようとして、それを持ち上げた時に、誤ってヘビの上に落としてしまうといった可能性が考えられる。ベテランの飼い主は、まずヘビを安全な場所に移動させてから、重い装飾品を動かすといったコツを知っている。掃除したケージを元の状態に戻す時にも、まず重い装飾品を置いてから、ヘビを入れるようにするとよい。

 砂漠風の飼育ケージによく見られる装飾品は、“骨状になったサボテン”である。これは植物繊維が乾燥して空洞の筒状になったもので、もともとはサボテンの幹を支えていた骨に相当する部分である(注:P165の写真参照)。ベテランの飼い主はこれを“中国人の死の指”と呼んでいる(注:昔のコミックなどに登場する悪の中国人の鋭い指先を想像するとよい)。我々はこれがペットショップで“自然の隠れ場所”として売られているのを見たことがある。普通、内部の空洞は直径4〜7.5cmで、筒の表面にはさまざまなサイズの小さな穴が開いていて、ハチの巣状になっている。我々はこの穴につまって命を落としたヘビを数多く見てきた。

 実際のところ、どんな穴であれヘビにとっては危険となりうる。ヘビが装飾品の穴につまってしまうケースは何通りもあるからだ。たとえば、一見何の害もなさそうな1本のプラスチック製の水道パイプがヘビを殺してしまったことがあった。事件はこんな感じでおきた。赤ん坊のボールパイソンのために、ケージのなかに直径5cmのプラスチック製のパイプを置いた。当初、小さなヘビはパイプのなかに潜りこんで休むこともできた。しかし当然ながら、ヘビは成長する。ある日、ヘビはマウスを食べた後、パイプのなかに潜りこみ、反対側から出て、180度方向転換して再びパイプのなかに潜りこもうとして、自分の体を無理矢理押しこんだ。ぎゅうぎゅう詰めの状態になったが、先ほど食べたマウスによって胴体がふくらんだところまで来て、動けなくなってしまった。結局、そのヘビは、体が輪になってパイプの片方から突き出した状態で死んでいるのが発見された。

 若いボールパイソンにとっては、枝やその他の登り用具が理想的な装飾品である。年をとった大型のボールパイソンも枝に登るが、若いヘビほどではない。よい装飾品を手に入れるためには、我々は外に出ることにしている。枯れたオークの枝を見つけだし(直径は最低でも1.5cm)、それを持ち帰って園芸用のハサミで理想的な長さに切断し、ケージの対角線上に置くのだ。外から持ち帰った枝についていたダニや細菌でケージ内のヘビが病気になったことは一度もない。だから、枝を消毒しようとしたこともない。木から直接切り取った枝のほうが、ヘビにとってははるかにおもしろい匂いがするかもしれない。別にオークである必要はない。どんな硬材や果実の木でもいいだろう。ただし、シーダー杉や杜松(ネズ)の枝や、それらから作った木製品は使用してはいけない。と言うより、強い香りのする物はどんなものであれ使ってはならない。

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