Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P193  いつ与えるか

 ボールパイソンに適切な餌を与えると、胴体部分にはっきりとした膨らみができる。しかし、それは胴体の皮膚がぎゅっと引き伸ばされるほどの大きなものではない。ボールパイソンに餌を与える回数は、ヘビが成長するにつれて変化していく。食べることに関しては、ボールパイソンはかなり順応性の高い生き物である。

 成体のボールパイソンはかなりの餌を食べる。餌が十分にあったとしたら、多くのヘビが量的にも回数的にも食べ過ぎることになるだろう。大きくて太ったボールパイソンを何と呼ぶか? 幸福なボールパイソンである。実際には、ボールパイソン種における肥満は、他の多くのパイソン種と比較すると少ないが、肥満になることはある。普通、大きくて太ったボールパイソンは繁殖には不向きである。少なくとも我々は、すぐれた繁殖力をもったヘビが欲しいと思っている。

 ヘビが餓死することもなく長期間餌を食べずにいられるということは、ほとんど誰もが知っていることである。しかし、そうした豆知識のせいで、ペットショップの従業員のなかには、月に一度しかマウスを与えないといった考え方を実践している者がいる。ボールパイソンは信じられないほどの断食にも耐えられるし、月に一度といった不十分な給餌スケジュールでも長い間生きることができる。しかし、1年以上もそうしたことを続けていると、それでは餌の量が十分とは言えない。

 成体のボールパイソンには、少なくとも2週間に一度餌を与えるようにするとよい。週に一度のペースで、時々与えないようにすると、さらにいいだろう。

 ボールパイソンの摂食習性を観察していて我々が感じるのは、ほとんどのボールパイソンは過食症だということである。我々は通常、成体のボールパイソンに週に一度餌を与えている。しかし、ほとんどのボールパイソンは性別や年齢に関係なく、時として、突然餌を食べなくなってしまうことがある。そして、再び餌を食べはじめるようになるまで、餌を拒絶するのだ。こうした摂食行動の中断は、体重が増えたこと・温度が低すぎること・温度が高すぎること・交尾活動といったことに対する反応としてあらわれることもある。しかし、ほとんどの場合、彼らはただ単に食べるのをやめる。こうしたことをしないヘビもいるが、ヘビが餌を食べなくなるのはかなり一般的なことである。

 我々は赤ん坊や若いヘビに対しては、1週間に2回(1回の分量はネズミ1匹)というスケジュールで餌を与えている。幼体のヘビはこのスケジュールで十分に成長する。6ヶ月もすると体が大きくなって、成体のマウスを与えても、胴体に膨らみができなくなってくる。この段階に達したら、彼らを大型のケージに移して、小型のラットを1週間に一度のペースで与えるようにしている。

 我々はこうした定期的なスケジュールを守ってはいるが、時々何か用事があって、餌を与えられなかったとしても、特に心配はしない。また、決まった曜日にしか餌を与えないように厳密に決めているわけでもない。通常、我々のところにネズミが配達されるのは、毎週木曜日である。だから、幼体に餌を与えるのは金曜日か土曜日のことが多い。とは言え、火曜日や水曜日に与えることもある。もし配達が火曜日になったとしたら、水曜日か木曜日に餌を与えるだろう。ヘビは別に気にしないだろう。

 ヘビが空腹を感じる度合いはヘビによって異なる。たとえば、もし赤ん坊のヘビがいて、その行動や成長パターンから考えて、非常におなかが空いているだろうと思われる場合があれば、普段の給餌スケジュールの合い間に餌やりを追加することもある。そうしたことは、あらかじめ決めたスケジュールに厳密に従うのではなく、その時の判断にもとづいて決定している。

 一般的に言って、一匹一匹のヘビに対して、餌やりの記録をつけておくのはいいことである。しかし、記録をつけることの短所は、厳密なスケジュールにこだわる飼い主がいるということである。そういう飼い主はヘビに餌を与える時に、ヘビの状態を見ることなく、スケジュール帳だけを見てしまうのである。これは大きな過ちであり、100%確実なヘビの飼育管理法を求めようとする飼い主の安全志向が悪い形となって表れたものである。たしかに爬虫類の飼育管理の大半は個々の単純作業へと分割することができるが、ヘビに直接関わる作業(給餌、清掃、繁殖)は、一匹一匹のヘビを注意深く観察して判断することが必要になってくる。何かをするかどうかは、それぞれのヘビの状態を見て決めなければならない。

 我々はボールパイソンの目がくすんでいて、脱皮の途中段階にある時には餌を与えないようにしている。脱皮の途中段階で餌を消化すると、脱皮する時に問題をおこす可能性がある。はがれた皮の一部がくっついて、簡単にはがれないようになってしまうのだ。

 餌を食べたヘビが脱皮しようとして、さらにひどい問題をおこしてしまったのを見たことがある。ヘビが脱皮する時には、まず口の周囲から皮が破れ、次に頭皮がむけて、首のところで丸まって、胴体を取り囲むような帯状になる。この帯は複数の皮が厚く重なっているので、なかなか破れない。この帯が皮をはぎとりながら、胴体をどんどん下っていくのだが、(餌を食べて)胴体が膨らんだ部分に達すると、きつすぎて帯が通過できない場合がある。もし皮の帯を無理矢理通そうとすると、ヘビにとっては危険なことになり、早期に発見して対処しないと、致命的になる可能性もある。この問題を解決するには、刃先の丸いはさみで帯を切断し、後はヘビが脱皮を完了するまで手を使って手伝ってやればよい。

 1年のほとんどを通じて、我々は成体のボールパイソンに週1のペースで餌を与えている。これ以上正確な数値で表現することは難しい。我々は個々のヘビに対して餌を与える回数とサイズを調整しており、正確にいつ何を食べたかといったことについては、それぞれのヘビによってかなりの個体差がある。我々が餌を与えても、食べない場合もあるし、ヘビがお腹を空かせているのに、我々が餌をやらないこともあるかもしれない。ヘビが太ってきた場合には、我々は餌を与える回数を減らすのではなくて、餌を小型のものに切り替えるようにしている。もしヘビが体重を増やす必要があるなら、大型のラットを与えるか、しばらくの間餌を与える回数を増やすようにしている。

 早熟なオスの場合には、ボールパイソンはわずか6ヶ月ほどで性的に成熟する場合がある。たいていのボールパイソンは、2歳半頃には交尾可能な体になっている。この頃になると、ボールパイソンの成長スピードは遅くなりはじめる。しかし、たいていのボールパイソンが成体のサイズにまで成長するのは、4〜7歳の間である。そのため、若いボールパイソンには、性的には成熟しているものの、肉体的にはまだ成長しきっていないというアンバランスな過渡期が存在することになる。こうした“ヤングアダルト”のヘビは生殖行動にエネルギーを使うだけでなく、成長のためのエネルギーも必要となる。我々はこうした過渡期のヘビに対しては、成体のヘビよりも餌を多く与えるようにしている。こうしたヤングアダルトのヘビが数週〜数ヶ月間餌を食べなくなることは珍しいことではない。だから、彼らが餌を食べている間は、定期的に餌を与えるようにしている。

 ボールパイソンが冬の繁殖期には餌を食べなくなるといった文章は何度も読んだことがある。こうした行動をとるヘビもいることは確かだが、必ずそうだというわけではない。冬の間じゅう餌を食べているボールパイソンも数多く存在する。我々は繁殖のために一緒のケージに入れたボールパイソンにも餌を与えている。2匹とも餌を食べるし、時には、餌を食べた1時間後に交尾していることもある。また、冬以外の季節に繁殖活動をしているボールパイソンも数多く見てきた。おもしろいことに、餌を食べなかったヘビが、交尾をした後に餌を食べはじめることがある。夏の一番暑い時期(8月と9月上旬)には、我々は適切な体重と健康状態にある成体のボールパイソンには餌を与えるのを中断している。

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