Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P188  何を与えるべきか

 当たり前のことだが、給餌作業の重要なポイントは、あなたが餌として何を与えるかということである。幸いなことに、ボールパイソンは珍しい餌(たとえばサイチョウの雛とか)しか食べない生き物ではない。たしかにボールパイソンも時々はサイチョウの雛を食べたいと思うかもしれないが、飼育されているほとんどのボールパイソンが好んで食べているのは、マウスとラットである。この二つは、ほとんどのペットのヘビにとっての基本食である。

 ボールパイソンはマウスだけ(若い時には小型のマウス、成長した時には大型のマウス)を食べていても、幸せに長生きすることができる。同じように、ずっとラットだけを食べていても、十分健康で長生きできる。しかし、もっとも一般的な給餌パターンは、まずマウスを食べはじめて、その後、SまたはMサイズのラットへと移行していくというものである。

 ここで、ペットショップや研究室で一般的に使われているマウスやラットの血統を紹介しておこう。マウスとラットには、それぞれ白色毛と有色毛の血統がある。マウスはイエネズミ(Mus musculus)の血統で、ラットはノルウェーラット(Rattus norvegicus)の血統である。マウスやラットの野生種は世界各地で見られる。そのなかには、アフリカのボールパイソンの棲息地域も含まれるが、大きな町や村の外ではあまり見られない。

 ボールパイソンはペットショップで売られているアレチネズミ(モンゴル・ジードとも呼ばれる)、ハムスター、カナリア、インコ、フィンチ、スズメ、ヒヨコ、小型のウズラ、ハトの雛なども食べることが知られている。聞いた話によると、アフリカ・ピグミーマウスやゼブラマウス(両方ともアフリカ原産の動物で、時々ペットショップで売られている)なども食べるそうである。また、ポケットマウス(Perognathus merriami)やディアマウス(Promyscus maniculatus)のような北アメリカ原産の齧歯類も食べることが確認されている。しかし、ペットのボールパイソンの餌の大部分を占めるのはマウスとラットなので、以下の文章では、この二つを与えることを前提にして話を進めていくことにしよう。

 齧歯類をボールパイソンに与える時には、大きく分けて三つの状態がある。生きているもの、死んだばかりのもの、解凍したものの三つである。どれが一番いいかについては、諸説さまざまである。まあ、とりあえず栄養的にはどれも同じだと言っておくことにしよう。

 直感的に、あるいは人間の例を参考にして類推するならば、成体のボールパイソンにとっての最高の食べ物は、生きた齧歯類、あるいは死んだばかりの新鮮な齧歯類だと考えるかもしれない。もちろん、人間の食事の場合には、新鮮な食材がベストであり、コレステロール成分の多いあぶら身よりは、赤身の肉のほうが健康にいいと言われている。齧歯類の成体は幼体よりも骨が多く、体脂肪率が低い。つまり、餌としては成体のほうがいいと言える。そうした論理とは裏腹に、我々は解凍したラットだけを何年間も食べ続けていたボールパイソンを見たことがある。解凍したラットは、人間の食事にたとえて言うと、電子レンジで解凍するピザと同じようなものである。そのボールパイソンは、他の餌を食べていたヘビと比べても、健康的には何も変わらないように見えた。だから、成体のボールパイソンの給餌に関して我々が言えることは、齧歯類が生きていようと死んでいようと、栄養的には何の違いもないということ、また、栄養学的な根拠をもとにして、若い齧歯類ではなく、年をとった齧歯類を選ぶ必要もないということである。

 しかし、ボールパイソンを赤ん坊の頃から飼育する場合には、これは妥当とは言えないかもしれない。我々は他のボールパイソンのブリーダーと話をしたが、彼らは生まれたばかりのヘビに対してピンクラットを与えたが、うまくいかなかったと報告してくれた。ボールパイソンはいずれラットを食べるようになるのだから、最初から与えればいいじゃないか、と彼らは考えたわけである。彼らの観察によると、ピンクラットだけを食べて育った成長期の若いボールパイソンは、急速に贅肉がついて丸くなり、骨密度が低下したようだった。彼らが大型のピンクラットやファジーラットの代わりに、小型のマウスへと切り替えたところ、若いボールパイソンの体形は普通の状態に戻ったそうだ。

 我々はいつも、若いボールパイソンには適度なサイズのマウスを与え、大型のマウスを与えても胴体部分に目立った膨らみが出ないようになると、餌を切り替えて、乳離れしたばかりの小型のラットを与えるようにしている。たいていは一度の食事で一匹しか与えないようにしているが、胴体部分が少し膨らむくらいがヘビにとっての適量だと考えているので、複数匹与える場合もある。

 餌の大きさはヘビにとって重要な問題である。体の大きなボールパイソンは、生まれたてのピンクマウスにはあまり関心を示さない。その反面、巨大な餌を食べたり、あるいは食べようとすることもヘビにとっては危険である。我々が考えるボールパイソンにとっての最適な食事は、胴体部分がわずかに膨らむくらいの一匹の齧歯類で、その膨らみが2〜4日ほど続くというものである。「ボールパイソンの胴体にわずかな膨らみができるくらいって言っても、そんな適度なサイズの齧歯類をどうやって見分ければいいんですか?」と多くの飼い主から質問されるが、それに対する決まりきった答えはない。だから、こう答えるしかない。「小から大へ。大から小へしないように」 つまり、まず最初は、適度なサイズだと思われる小型の齧歯類をボールパイソンに与えて、どの程度の膨らみができるかを観察する。もし膨らみがないようなら、次に餌を与える時には、前回より少し大きめの齧歯類を与えて、膨らみの程度を見る。理想的な結果が出るまで、これを繰り返せばよい。

 一般に「スネーク・ソーセージ」と呼ばれる、ヘビ用のペットフードが販売されている。また、飼い主や動物園のなかには、定期的に自家製のソーセージを作ってヘビに与えているところもある。ある種のナミヘビ科と多くのコブラ科は、喜んでソーセージを食べるようだ。ボールパイソンが食べるソーセージを誰かが開発したら、すばらしい発明品になるだろう。しかし、今までのところ、ボールパイソンにソーセージを餌だと認識させることには誰も成功していないようである。

ボールパイソン大百科 目次に戻る

トップページに戻る

inserted by FC2 system