Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P38  脱皮のトラブル

 一般的に言って、はがれ落ちずに残った皮は、気にするほどのものではない。もちろんヘビはうれしく思わないだろうし、間違いなく不快で、見た目も良くない。しかし、これが致命的な問題となることは稀である。通常、残った皮は簡単に取り除ける。もしそれができなかったら、次の脱皮の時までそのままにしておいて、脱皮の時が来たら、湿度を上げてヘビが問題を解決できるようにしてやればいいだろう。

 残ってしまった皮を取り除く場合は、大きく分けて二つある。一つは頭部や胴体から残った皮を取り除く場合。もう一つは残ってしまったアイキャップ(まぶた)を取り除く場合である。

 ボールパイソンが脱皮したのに、皮の一部がくっついて残ってしまった時、まず最初にするのは、その皮がめくれるかどうか確かめることである。普通、くっついた皮の前の縁をつまんで後ろに向かって引っ張ると、何の問題もなくはがれ落ちるだろう。残った皮が小さな破片なら、新しいOEG(外部表皮生成層)を傷つけないようにして爪の先でひっかいてやると、それだけではがれ落ちることもある。

 もし残った皮がヘビの体にくっついているような場合、それを取り除く方法は、ヘビを浅い水にしばらく浸けておくことである。30〜60分後にチェックしてみれば、大抵の場合くっついていた皮が自然にはがれ落ちているだろう。

 しばらく水につけても皮がしっかりとくっついている場合、もっと長い間(たとえば一晩中)ヘビを水に浸けておくこともできる。もし皮が非常にしっかりとくっついているように見えるなら、ヘビを浸けておく水のなかに少量の石鹸を混ぜてもよい。我々が使っているのは、食器洗い用の液体洗剤である(最近増えている除菌洗剤ではなく、普通の洗剤である)。加える洗剤の量はほんの少しでよく、かきまぜた時に数個の泡ができる程度、あるいは、舐めた時にほんの少し石鹸の味がする程度でよい。これはヘビにとっての泡風呂のようなものである。8〜12時間たっても、皮が取り除けないようなら、あきらめてそのままの状態にしておき、次回の脱皮の時にはがれ落ちるのを待つほうがよい。

 ボールパイソンを水に浸ける際には、いくつかの重要事項がある。なかでも一番重要なのは、水深が浅いことである。水深はヘビの胴体の高さの半分以下でなければならないが、必要以上に浅すぎてもいけない。水深が深すぎて、ヘビが息をするために泳がなければならないような場所にヘビを浸けてはならない。ヘビが泳げないほどの深さ(浅さ)の水深が望ましい。水温も熱すぎず冷たすぎずでなければならない。理想的な水温は25〜29℃で、水を入れた容器を置く場所の温度も、同じ温度範囲内になければならない。

 ボールパイソンを水に浸けるための容器は、水漏れのしないしっかりとした作りのものでなければならない。ちゃんと通気性があることを確認するように。大きかったり豪華だったりする必要はない。小型のパイソンであれば、デザートが入るくらいの大きさのプラスチック製のタッパーなどで十分水に浸かることができる。平均的なサイズの成体のボールパイソンであれば、30×30cmのプラスチック製のタッパーで水に浸かることができるだろう。

 ヘビを布製の袋に入れたまま水に浸けないように。清潔な布袋やスネークバッグや枕カバーなどにヘビを入れて、それを浅い水に浸けておくという方法は、一見いいアイデアのように思える。理論的には、たとえ水の深さが数ミリだったとしても、袋が水を吸収するので、ヘビの全身が濡れることになる。しかし、これは致命的な結果をひき起こすことがあるので、やってはならない。袋の布地に水が沁みこんで、繊維の1本1本が膨らんだ結果、袋のなかが気密状態になって、ヘビが窒息してしまう可能性がおおいにあるのだ。一言で言えば、濡れた袋は死の罠になる危険性がある。我々は何年もの間、こうした状況で死んでしまったヘビの悲しい話を何度も聞かされてきた。

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