Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P38  アイキャップ(まぶた)

 時には、ボールパイソンが完全に脱皮したのに、片目あるいは両目がどこかおかしいように見える場合がある。ヘビは脱皮をする際に、アイキャップ(まぶた)だけを残してしまう場合がある。アイキャップとは目の部分を覆うレンズのようなもので、本来ならば脱皮の際に皮と一緒にはがれるはずである。しかし、厚くて透明なレンズの周囲にある薄い皮が破れ、目を覆うアイキャップだけがちょうどコンタクトレンズのようになって残ってしまうことがある。時には、アイキャップがその下にある新しいレンズ部分に文字通りくっついていることもあるが、普通はアイキャップがあまりにもぴったりとフィットしているので、はがれ落ちにくくなっているだけである。

 ある種のヘビにおいては、アイキャップが残ってしまうのはよくあることだが、ボールパイソンにとって問題となることはあまりない。アイキャップが残っても、重大な健康被害をひきおこすことは稀である。ボールパイソンではないが、13回もアイキャップが残ったヘビを見たことがある。そのヘビはアイキャップを取り除いてやると、その下から普通の健康な目があらわれた。

 アイキャップがあるかどうかの判断は難しい場合がある。なにしろ、アイキャップは非常に薄くて透明な物質なのだから。しかし、通常、アイキャップが残っている場合は、アイキャップがない時と比べて、ヘビの目の光沢がないように見える。脱皮したばかりで新しいレンズがついている目は、明るく透き通って見えるはずである。アイキャップが残っていると、目の周囲のふちの部分が少し腫れているように見え、ボールパイソンの目の周囲の皺の部分にダニが寄生している時の状態によく似ている。

 アイキャップが残っているかどうかを判断する一番簡単な方法は、脱皮した皮を調べて、そこに古いレンズがついているかどうかを確かめることである。皮が乾燥してくっついてしまっている場合には、それをぬるま湯に数分間浸けておけば、やわらかくなって調べやすくなる。

 むしろ、ヘビが脱皮した時には、いつでも皮を調べるというのが、理想的な飼育管理法だろう。古いレンズがあるかどうかを確かめ、皮の全体的な状態も確認すること。ヘビが怪我や火傷をしていたりすると、胴体の一部の皮膚だけが異常に分厚くなっていることもある。

 アイキャップが残っていると疑われる場合には、ヘビの目をくわしく調べれば、その疑いが本物かどうか確信が得られるだろう(もちろん、あなたが細かい部分を見つけだす優れた視力を持っていると仮定した場合の話である。年をとってくるにつれ、我々はだんだん視力に自信が持てなくなってきた)。アイキャップと思われる部分、目の中心部を指先でそっと触れ、それを上下左右に動かしてみる。そうすると、普段は目の周囲のうろこの下に隠されているエッジ部分を見ることができる。目のレンズが適切な状態にあるなら、周囲の皮膚とスムースにつながっている。一方、アイキャップが残っている場合は、エッジ部分の薄い皮膚が数ヶ所破れているのが確認できるはずである。

 アイキャップを取り除くためには、先の丸い道具でエッジ部分をひっかけ、注意深くそっと持ち上げるだけでよい。大抵の場合、最初少しだけ抵抗があって、それからポンとはずれるはずである。先の丸いプローブや爪先を使ってもよい。

 注意点は二つあり、そのどちらも大切である。まず第一に、アイキャップが100%確実に存在していることが何よりも重要である。完全に正常なレンズが皮膚から切り取られて、目からはがされてしまうといったことが実際におきている。こうした事態がおきると、保護レンズが無くなってしまうので、目は急速に乾燥して萎びてしまい、遂には失明してしまう。

 第二に、アイキャップを取り除くための道具で、レンズやその周囲の皮膚に穴を開けてはならないということも重要である。我々が今までに使用してきたのは、つまようじ、ヘアピン、まっすぐに伸ばしたゼムクリップ、小型のポケットナイフ、小さな性判別用プローブ、あるいは、アイキャップを取り除こうと決めた時にたまたま手近にあった何か小さい物などである。我々はやり方を熟知しているので、適当に道具を選ぶようなことをしても、ヘビの目を傷つけたことは一度もない。しかし、我々はともかく、他の飼い主が傷つけてしまった例は存在している。ボールパイソンのほうはあなたが何をしようとしているのかわからず、協力的になることはないだろうということを忘れてはならない。ヘビをきちんと固定しないと、安全にアイキャップを取り除くのはとても難しくなるだろう。最大限の注意と集中力が必要とされる。レンズに穴を開けてしまうこと自体が、すぐに大問題となるわけではない。しかし、それは感染のもとになることがあるし、失明の危機につながる場合もあることを忘れてはならない。

 アイキャップを取り除くべきかどうか悩んでいるなら、一番重要な点を思い出すこと。別に無理してアイキャップを取り除く必要はない。飼育環境がきちんとしていれば、次回の脱皮の時に自然にはがれ落ちるだろう。残ったアイキャップのエッジ部分がうまくとらえられない(アイキャップがあるのは確認できても、エッジ部分の下に道具を差し込めない)場合は、そのことは忘れて、そのままにしておけばよい。アイキャップのエッジ部分をとらえたものの、それを持ち上げようとすると、うまくはがれないような場合は、作業を中止して、そのままにしておくこと。アイキャップ自体はヘビの目を傷つけることはないが、あなた自身がヘビの目を傷つけてしまう恐れがある。

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