Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

ワイルド変異体  アルビノ〜ブラック・パステル

 以下は、数々のワイルド変異体の説明である。この本のなかで写真つきで紹介されているもの、もっとも長く飼育されているもの、デザイナー変異体として大きく貢献したもの等に関しては、特にくわしく説明している。遺伝することがほぼ確実に証明された変異体だけでなく、遺伝しないことが確認された変異体も紹介している。これは全てのワイルド変異体を網羅した完全リストではない。ある特定の変異体が掲載されていないことがあるかもしれないが、別に我々がその存在を疑問視しているという意味ではない。ただ単に数が多すぎて、ついていけないだけである。

 

アルビノ

 一番最初に繁殖されたワイルド変異体が、アルファベットのAではじまるというのは、おもしろい偶然である。「アルビノ」という説明的な用語は、皮膚や目に黒の色素を持たないヘビのことを意味する。アルビノのボールパイソンは複数の種類が存在している。そのなかには、キャラメル・アルビノ、ラベンダー・アルビノ、バーガンディ・アルビノ(ブルゴーニュ・アルビノ)、さらにはパラゴンやコーラルグローといった変異体も含まれる。しかし、用語の意味を厳密に定義するならば、「アルビノ」という言葉は、「黄色の模様・ピンクの目・赤い瞳孔を持った白いヘビ」に代表される変異体を指す言葉として使用されるべきだと思う。このアルビノ変異体は、「陰チロシナーゼ・アルビノ」「陰Tアルビノ」「T-アルビノ」「普通のアルビノ」などと呼ばれることもある。

 孵化したばかりのアルビノは、濃い黄あるいはオレンジの斑点を持っていることが多い。ヘビが成長するにつれ、斑点は少しずつ赤あるいはオレンジの色素を失い、より黄色っぽくなる。時には、幼体の地色(白)が成長にともなって淡い黄色になることもあるが、生涯を通じて地色が真っ白のままの個体もいる。

 アルビノ変異体には、いくつかの側面(フェイズ)がある。たとえば、ペール・アルビノ、イエローヘッド・アルビノ、ハイコントラスト・アルビノなどである。しかし、我々の知るかぎり、それらのフェイズは全て互換性がある。つまり、違うフェイズのアルビノ同士を交配しても、その結果誕生するのは全てアルビノということである。

アザンシック

 「アザンシック」という言葉は「黄色がない」という意味であり、それがこの変異体の特徴をよく言い表している。アザンシック変異体には複数の系統があり、その全てにおいて、表現形質は単純劣性形質として遺伝する。通常、これらの系統は、その元となったグループによって区分されている。一番よく見られる系統は、VPI系アザンシック、スネークキーパー系アザンシック、ジョリフ系アザンシックである。これら三つの系統は、同じアザンシック形質でも、それぞれ違った変異をしている。これらの系統に互換性はないと見られている。つまり、これらの系統のヘビを交配しても、その結果生まれてくるのは、両親のアザンシック形質が二重接合したノーマルな外見のヘビである。

 アザンシック風の外見をしたボールパイソンは、定期的に輸入されてくる。また、これら以外にもアザンシックは繁殖されており、そうしたヘビはまず外見が遺伝するかどうかを確かめた後、既存の系統と異なる新しい変異があるかどうかを確認することになる。

 成長するにつれ、模様の黄色が増加するのは、ボールパイソンにとって普通のことである。生まれたてのアザンシックは目をみはるような銀と黒のヘビだが、なかには成長するにつれ、模様に黄色が増えるために、茶色っぽくなるものもいる。

バナナ

 バナナ変異体の外見はキャラメル・アルビノと似ているが、胴体の濃い模様の部分だけに暗色の小さな斑点がついている。この変異体は、黒い目をした、淡くきれいな黄色のボールパイソンである。濃い模様部分は薄いラベンダーグレイで、たいていのキャラメル・アルビノに見られる濃い色と同じものである。

 一番最初に誕生したバナナと普通のボールパイソンを交配したところ、最初の卵でバナナ変異体が出現した。そのため、この外見は優性もしくは共優性遺伝であると考えられる。生まれたばかりのバナナはもっときつい黄色と金色だが、成長するにつれ淡くなっていく。この変異体がホワイトスモーク(コーラルグロー)と同じくらい色が薄くなるかどうかは不明である。ちなみに、一番最初のホワイトスモークは、成体になってから捕獲されて輸入されたものだった。

ブラック

 典型的なブラック変異体は、小型で暗色のボールパイソンである。なかには(比較的)色が薄くて細い縞が背中にあるものもいるが、ほとんどは普通の模様をしている。ちゃんと計測して確認したわけではないが、他のヘビと比較して目が大きいという印象を受ける。なかには、かなりメラニン色素が濃いものもいるが、常に模様は判別できる。この変異体は定期的に輸入されている。ブラック変異体とその子孫を繁殖させた我々の経験から言うと、ブラック変異体は遺伝可能な形質ではない。

 「セーブル」が遺伝可能だということが確認されたことにより、ブラック変異体の系統が認められることになった。セーブルとブラックの違いは、側面の色の薄い部分に黒い斑点がちらばっている点である。これはグラナイト変異体の側面模様とよく似ている。

ブラックバック

 現在、ブラックバック変異体の系統は複数存在している。我々の知るかぎり、現在までの繁殖の結果によると、その外見はある程度遺伝可能であることが明らかになっている。おそらく自然界においては、単一の遺伝子の発現ではなく、多元遺伝子の発現であると思われる。ブラックバックのなかには、とても魅力的なものもいて、新しいブラックバックの遺伝法則を発見しようと取り組んでいる飼い主もいるほどである。

ブラック・パステル

 ブラック・パステル変異体は、名称が変更になったことのある系統の一例である。初めてこの変異体を自然捕獲したブリーダーは、その系統を「ラビリンス」と名づけた。これらのヘビ同士を交配したところ、さらにラビリンスとスーパー・ラビリンスが誕生した。スーパー・ラビリンスは全身が黒い変異体で、現在は「エイトボール」「パターンレス・ブラック」と呼ばれている。

 その時に産まれた「ラビリンス」の赤ん坊は全て、別のブリーダーに引き取られ、「ブラック・パステル」と名前を変えられた。この変更には正当な理由があった。「ラビリンス」という名前は、全く別の外見のヘビを表す言葉としてすでに定着していたのだ。現在では、ブラック・パステルという名前が一般に受け入れられて広く使用されている。

 ブラック・パステルは、デザイナー変異体を作り出すのに役立つヘビだということがわかっている。ブラック・パステルとパステルを組み合わせると、ピューター変異体が生まれる。パステルとピューターを組み合わせると、非常に珍しい「シルバーストリーク」という、ほとんどリューシスティックのような外見のヘビが誕生する。

 ブラック・パステルと見なされたヘビは、定期的に輸入されている。そのなかには既存の系統と互換性があると確認されたものもある。しかし、ブラック・パステルのように見えるヘビの全部がブラック・パステルだとはかぎらないということを警告しておきたい。野生で捕獲されたヘビが、その外見をもとにして特定の変異体だと見なされた場合、期待はずれに終わることもある。変異体の存在を声高に公表する前に、それが本当に変異体かどうか、繁殖を通じて確認することが常に大切である。ヘビを購入する際は、証明された系統であることが保証された個体を買うようにお薦めする。

ボールパイソン大百科 目次に戻る

トップページに戻る

inserted by FC2 system