Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

ワイルド変異体  ブラック・ストライプ〜ゴースト

ブラック・ストライプ

 ブラック・ストライプと考えられる黒い背中をしたボールパイソンは数多く存在しているが、この名称はある特別なヘビに対してのみ使いたい。それは野生で捕獲された個体で、胴体のほとんどにわたって幅広の黒い縞が伸びている。その縞をふちどるようにして、色の薄い細い縞があり、さらにそれをふちどるように細い黒の縞がある。現時点では、この外見の遺伝法則はわかっていない。

ブラック・ヘッド

 ブラック・ヘッドは魅力的なボールパイソンで、側面の模様に幅広の黒い縁がある。頭頂部と背中は黒で、背中には細い黄色の縞がとぎれとぎれに続いている。この変異体を交配すると、第一世代でブラック・ヘッドの赤ん坊が誕生する。そのため、この遺伝形質は優性もしくは共優性だと考えられる。

バーガンディ・アルビノ

 バーガンディ・アルビノは2000年に輸入された臆病な性格の成体で、一匹しか存在しない変異体である。この文章を書いている時点では、飼育環境下でまだ子供を産んでいない。この形質は遺伝するはずだと考えているが、今のところは証明できていない。この変異体が一番似ているのは、かなり色の薄いパラゴン変異体である。

 バーガンディ・アルビノは、全てのパイソンにあてはまる大原則の実例である。つまり、成体になってから自然捕獲されたメスのほとんどは、飼育環境下では子供を産まなくなる。そして、いずれ子供を産むようになったとしても、人工的な飼育環境に慣れるまでには数年かかることもある。これからヘビを購入しようとしている人は注意すること。

バター

 バター変異体は優性もしくは共優性形質として遺伝する。現時点では、スーパー体は知られていない。バター変異体はバターボール変異体とよく似ている。両者は同じものかもしれないが、現在のところ、異種交配はされていない。バターから生まれた子供と、レッサー・プラチナの同胞(ノーマル)とを交配させると、その子供のなかには、プラチナに似ているが、たいていのプラチナよりも色が薄くて黄色っぽいヘビが含まれている。

バターボール

 バターボール変異体は、外見的にはバター変異体とよく似ている。二つの系統を異種交配して、それぞれの形質の間に互換性があるかどうか確認されたことはない。この形質は優性もしくは共優性形質として遺伝し、現時点では、スーパー体は知られていない。

キャリコ

 「キャリコ」と名づけられた変異体は複数存在している。シュガー変異体をキャリコと呼ぶブリーダーもいる。「キャリコ」の名前にもっともふさわしいと我々が考えるヘビは、自然捕獲された大きなメスの成体で、胴体に大きな白い部分があり、そこに暗色のうろこが大量に飛び散っている。この変異体はまだ子供を産んでおらず、遺伝法則は不明である。

キャラメル・アルビノ

 キャラメル・アルビノは愛らしい変異体で、模様はノーマルだが、色づかいが豊かで、黒の色素がラベンダーグレイに置き換わっている。目の瞳孔は赤である。この変異体は当初キャラメル・アルビノと名づけられ(1995年)、その後、「陽チロシナーゼ・アルビノ」(「T+アルビノ」、「陽Tアルビノ」と省略されることもある)へと変更された。この変異体は何年も前から飼育環境において繁殖されており、それぞれ異なる野生種から誕生した複数の系統が存在する。美しいデザイナー変異体のいくつかは、キャラメル・アルビノを親にしていることもある。

 複数のブリーダーから聞いた話だが、キャラメル・アルビノの系統のなかには、背骨の変形をともなうものが発生することもあるそうだ。自然捕獲した個体のなかにも、背骨や尻尾にこぶができている場合がある。

チョコレート

 チョコレート変異体というのは見たことがないが、スーパー・チョコレート変異体なら見たことがある。これはカモ(カモフラージュの略)変異体と呼ばれることもある。チョコレート変異体は共優性遺伝である。

チョコレート・フェイド

 チョコレート・フェイド変異体は、頭部が茶色で、背中の縞はかなり幅広で、黒にふちどられた茶色である。現在、遺伝法則は明らかになっていない。

シナモン

 シナモン変異体の典型的な外見は、頭部が茶色、背中の縞は茶色で、太い黒の線にふちどられている。シナモンはもともと「シナモン・パステル」と呼ばれていたが、短縮されてただの「シナモン」となった。シナモンの模様は、モハーベ変異体やブラック・パステル変異体の模様と似ている。シナモンの外見は共優性形質として遺伝し、「スーパー・シナモン」(別名「エイトボール」)は模様のない黒いボールパイソンとなる。パステルとシナモンをかけ合わせたデザイナー変異体は、ピューター変異体である。パステル・スーパー・シナモンは「シルバーブレット」と呼ばれている。

クラウン

 クラウン変異体は単純劣性形質として遺伝する。この変異体を定義するいくつかの特徴点には、さまざまなバリエーションが見られるが、代表的な外見は鮮やかな琥珀色をしており、そのきれいな淡い色の外見は一生続く。生まれたばかりの頃や若い頃には、背中に黒い(もしくは黒に近い)模様があるが、成長するにつれ、色が薄れて茶色っぽくなる。結果として、成体は若体(ジュブナイル)よりも全体的に色が薄くなる。背中の模様は不規則な縞になっている。側面の模様はさまざまで、模様がないものや、細かい斑点が不規則に散らばっているものもいる。背中の縞には、縦方向の線がつながっている。そして、白い涙型のマーキングがある。頭頂部の模様は、ノーマル体と比較すると、色が薄く少なくなっている。

 この変異体が「クラウン(道化師)」と名づけられたのは、一番最初の変異体が片目の下に小さな黒点を持っていて、それが道化師の顔にペイントされた涙を連想させたからである。クラウン変異体の子孫のなかには、このマーキングを持っているものもいるが、この涙型のマーキングは遺伝的な形質ではないことが判明している。

コーヒー

 コーヒー変異体は、コーヒーにほんの少しミルクを加えたような色のボールパイソンである。背中の縞は薄く、側面には“標的”のような形の円形模様が見られる。複数のコーヒー変異体が輸入され、さまざまな組み合わせで繁殖が試みられたが、この形質は遺伝しないようだ。

デザート・ゴースト

 デザート・ゴースト変異体は、非常に人の目をひきつけるヘビである。体色はとても薄く清らかで、シンプルな暗色の模様をしている。デザート・ゴーストの第一印象は、漆黒の模様の白いヘビであるが、注意ぶかく観察してみると、とても薄い黄茶(イエローブラウン)もしくは骨白(ボーンホワイト)であることがわかる。薄い地色には、ほとんど(あるいは全く)メラニンの陰影がなく、そのため、デザート・ゴーストは清らかな見た目になっている。暗色の模様は実際には黒ではなく、濃い灰色もしくは紫がかった灰色である。デザート・ゴーストは繁殖されており、その形質は単純劣性として遺伝する。

 黒い模様のある薄い銀灰色のヘビがデザート・ゴーストとして分類されているのを見たことがある。これが同じ系統であり、互換性があるのかどうかは不明である。

ダーティー・ジョー

 ダーティー・ジョー変異体は、比較的ノーマルな外見をしているが、模様の色の薄い部分全体に、黒い色素がかなり多く含まれているため、煤まみれのような汚れた印象を与える。この外見はIMG-サルファー変異体とよく似ている。遺伝法則は明らかになっていない。

ファイアーボール

 ファイアーボール変異体が共優性ヘテロ接合すると、黒目・リューシスティックとなる。この外見はゴースト変異体とよく似ている。ファイアーボールは、茶色の模様を持った薄茶色のヘビである。色の薄い模様の部分には白が多く含まれていて、白い皮膚に薄茶色のうろこがあるように見える。成体の模様には黒の色素は最小限しかなく、濃茶の色素が黒に置き換わったのかもしれない。少数例だが、ノーマルの模様がかすかにあるだけの個体もいた。模様のほとんどは、背中のちぎれた斑点と、背中を横切る細い帯線である。頭頂部は茶色で、中心部分の色が薄くなっている。

ゴースト

 ゴースト変異体もまた、歴史とともに名称が変更されてきた変異体である。一番最初のヘビは「ザンシック(黄色の)」と呼ばれていた。黒色素が欠落しているのではなく、黄色素が過剰にあったため、薄い黄色の外見をしていたからである。

 この外見は時として「低メラニン症(ハイポメラニスティック)」「ハイポ」と呼ばれることもあるが、実際には、低メラニン症の変異体は他にも数多く存在している。「低メラニン症」という説明的な用語を、変異体の名称に使うのは不適切ではないかと思う。

 いつのまにか複数の系統が別の変異体から名前を拝借して、「ゴースト」という名前を使うようになり、それが一般に定着したらしい。通常、ゴースト変異体の外見は“幽霊のような”ぼんやりした感じで、繻子(サテン)のような玉虫色のつやがあり、それがゴースト変異体の本質でもある。

 我々がゴーストと認める外見は複数存在している。ブルー・ハイポ、ハイポ、グリーン・ゴースト、ザンシック…これらはほんの一部である。自然捕獲された多くのヘビが輸入され、それぞれの所有者がそれぞれの名前をつけているために、混乱を招いている。各ゴーストはそれぞれ変異の程度が違っており、それら全てが同じ対立遺伝子(群)の発現によるものなのかどうか、きちんと確認・検証されたわけではない。ゴーストと呼ばれているヘビのなかには、実際には別の変異体が混じっている可能性もあるが、その変異が同一のものか、それとも互換性がないのかを確かめるためには、実際に繁殖をしてみるしかない。すでに証明されたゴースト変異体は全て、単純劣性形質として遺伝する。

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