Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

ワイルド変異体  グラナイト〜レッサー・プラチナ

グラナイト(花崗岩)

 グラナイト変異体の特徴は、側面の薄い模様に、黒もしくは濃茶のうろこの小さな点が不規則にちらばっている点である。この形質は優性遺伝である。

IMG

 IMGという名前は「increasing melanin gene」(メラニン増加遺伝子)の略である。この名前は最初に見つかった個体にもとづいてつけられた。そのヘビは美しい白黒のジュブナイル体だったのだが、成長とともに色が暗くなり、模様の色の薄い部分(かつては白だった)に黒の色素がどんどん増えてしまった。4〜5歳になる頃には、そのヘビはチャコールと黒色になり、とても煤けた外見になてしまった。同じような外見のヘビも輸入されているが、我々の知るかぎり、繁殖されたものはなく、遺伝法則は不明である。

IMG-サルファー(硫黄)

 IMG-サルファー変異体は、ダーティー・ジョー変異体やIMG変異体に非常によく似ているが、IMG-サルファーの薄い模様は黄色である。この変異体は年齢とともに確実に色が濃くなる。しかし、IMGほどではないだろう。幼体やジュブナイル体が確認されたことがあるかどうか我々は知らない。この変異体に関しては、まだまだ不明な点が多い。

アイボリー

 アイボリー変異体は、飼育環境で誕生した初めてのリューシスティックである。この文章を書いている時点では、少なくとも1匹の成体と2匹のジュブナイル体が、アフリカから輸入されている。ひょっとすると、もっといるかもしれない。驚くべきことに、過去数十年の間にアフリカから輸入されたボールパイソンは100万匹以上いるのに、確実にリューシスティックだと認められる報告例は一度もなかった。ところが、アイボリー変異体が発見されたのをきっかけにして、またたくまに、少なくとも5種類のリューシスティックの系統が確立されることになった。一時は、リューシスティックはボールパイソン界における聖杯であり、ブリーダーにとっての夢の秘宝だと見なされていた時期もあった。現在のブリーダーたちは、デザイナー変異体を作ろうとしてリューシスティックが産まれると、がっかりするようになった。

 アイボリーは共優性遺伝子のスーパー体(ホモ接合体)である。共優性の遺伝子型は「イエローベリー」と呼ばれている。成体のアイボリーは、黒っぽい目の白いヘビで、背中には白もしくは象牙色の細い縞があり、頭部の模様は薄くなっている。頭頂部はほとんど半透明になっており、色の濃い筋肉組織が透けて見え、前頭部・頭頂部・後頭部が淡いピンクっぽい紫色に見える。目の後ろにある白い縞は、下の輪郭に沿った細くてわずかに濃い線によって、はっきりと分かれている。アイボリーと他の変異体を区別するわずかなマーキングは、ジュブナイル体のほうが明確に出ている。成体のアイボリーは体のほとんどが白である。

ジャガー

 ジャガー変異体は証明されていない変異体で、外見はジャングルやラビリンスによく似ている。今後繁殖がおこなわれて、この外見が遺伝可能ではないことが明らかになれば、この変異体はジャングルに分類して、別の系統が「ジャガー」という名前を使えるようにしたほうがいだろう。

ジャングル

 ジャングル変異体はブリーダー泣かせの変異体である。ジャングルはもっとも美しいボールパイソンの一種であり、いくつかの特徴によって簡単に見分けがつく。しかし、残念なことに、その外見は遺伝可能なものではない。ジャングルの外見をしたヘビは、時々、卵のなかから偶発的に産まれてくる。クラシック・ジャングルの多くが何世代も交配を繰り返したが、予測可能な遺伝法則を見つけだすことはできなかった。ジャングルの外見をした赤ん坊のヘビが、実際にはヘテロ・クラウン、ヘテロ・パイボールド、ヘテロ・アルビノだったという例もある。

 通常、生まれたばかりのジャングルは明るいイエローゴールドで、黒い模様がでたらめについている。目の色は薄く、頭頂部は黒で、その中心は茶色である。ジャングルの明るいイエローゴールドは、年とともに少し濃くなる。しかし、生涯を通じて、体色は淡く、きれいなままである。

 我々が初めて手に入れたジャングルは、1990年の第1回オーランド・エキスポで若い男性から購入したものである。その男性は3匹の子ヘビを「ジャングル」と呼んでいた。その理由は、当時人気の出始めたジャングル・カーペット・パイソンのように黄と黒の体色をしていたからだ。彼は数千匹の輸入品のなかから、その3匹を選り分けたのだった。そのヘビはエキスポの参加者たちの注目を集め、話題の的になっていたが、そのヘビにつけられた高い値段を支払おうという人は誰もいなかった。

 我々は3匹のビルマ・パイソンの幼体(当時は1匹1000ドルで売られていた)と、3匹のジャングルを交換した。我々がジャングルを手に入れたというニュースはまたたくまに広がり、友人の多くは、我々がただのボールパイソンにそんな大金を支払ったことにあきれ顔をしていた。その後ボールパイソンの世界がどうなるか誰も知らなかったけれど、我々はこれほどきれいなパイソン変異体なら、どんなものでも価値はあると思っていた。我々はこのジャングルやその子孫、さらにはその後手に入れた他の系統などを考えうるかぎりの組み合わせで交配したが、悲しいことに、ジャングルがどんなにきれいで珍しいものだとしても、その外見は遺伝しないということを認めざるをえなかった。

 ジャングルはかなり変化指数の高い変異体である。いつの日か、ジャングルの外見的特徴にあてはまるようなボールパイソンが遺伝可能な形質を持っていると証明できる日がくるかもしれない。その場合には、そのヘビはジャングルとは別の系統として、新しい名前をつけたほうがいいだろう。

ラビリンス

 「ラビリンス」という名前は、正確には、側面の濃い模様が大きく太くなったジャングル変異体の1バージョンのことを指す。我々がジャングルを手に入れた数年後、他の人間が飼っていた数匹の幼体(輸入品)にラビリンスという名前がつけられ、それが一般に広まっていった。実際には、我々が1990年に入手した最初の3匹のうちの1匹は、後にラビリンスと認められるようになる模様特性を持っていた。ラビリンスの多くは見た目がすばらしく、「遺伝すべき変異体がいるとすれば、これこそ正にそうだ」と思わせるほどのものである。しかし、残念なことに、ラビリンスの外見は遺伝しない。ラビリンスの歴史はジャングルの歴史と同じであり、我々はこの二つは同じ変異のバリエーションではないかと考えている。

ラベンダー・アルビノ

 生まれたばかりのラベンダー・アルビノ変異体は、ハイコントラスト・アルビノと区別がつきにくい。生まれたばかりのラベンダー・アルビノの斑点は、アルビノよりもオレンジっぽく、頭頂部にはイエローオレンジの長方形の斑点がある。そして、くわしく調べると、側面の白い模様のなかには半透明の窓のようになっている部分がある。幼体の体色はすぐに成体の体色へと変化しはじめる。成体のラベンダー・アルビノとアルビノがもっとも違っている点は、淡い地色(背景色)である。アルビノは白だが、ラベンダー・アルビノはちょっと変わった薄いラベンダーグレイ、もしくは薄いラベンダーブラウンである。地色はあたかも半透明の皮膚のように見え、明るい黄色の模様が皮膚の表面から分離して浮いているように見える。目はアルビノのピンクに比べてかなり濃い色で、虹彩は茶色か赤っぽい茶色、瞳孔は濃い赤である。

 この変異体の遺伝法則は単純劣性遺伝である。我々はラベンダー・アルビノが陽チロシナーゼ型のアルビノの一種ではないかと考えている。

レッサー・プラチナ

 レッサー・プラチナ(別名レッサー)は、プラチナ・グループに属する変異体の一つである。レッサー・プラチナ自体の模様は、バターやモハーベの模様とよく似ている。レッサー・プラチナは見た目がとても清らかで、普通は体色が薄茶もしくは緑がかった薄茶で、赤茶の模様がついている。模様には、ほとんど(あるいは全く)黒の色素がない。頭頂部は茶色で、腹部は白、側面下部にも白がある。

 レッサー・プラチナの系統は、もともと自然で捕獲されたプラチナの子孫である。そのオスヘビをノーマル体のメスと交配したところ、その結果産まれた子供の半分はレッサー・プラチナで、半分はノーマルだった。そこで産まれたレッサー・プラチナのメスを、父親であるプラチナとかけ合わせたところ、プラチナ、レッサー・プラチナ、ノーマル、青目・リューシスティックが誕生した。レッサー・プラチナとノーマルを交配させると、レッサー・プラチナを含む卵(クラッチ)を産む。レッサー・プラチナとレッサー・プラチナを交配させると、ノーマル、レッサー・プラチナ、青目・リューシスティックが産まれる。この変異体の遺伝法則は共優性形質だと考えられるが、プラチナ・グループの間には予期せぬ相互作用が存在している。

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