Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

ワイルド変異体  ミントパール〜ピンストライプ

ミントパール

 「ミントパール」という名前は、(ほとんど)リューシスティックで黒っぽい目をした、自然捕獲された1匹のヘビのことを指している。パール変異体の側面下部と腹面は白である。胴体の上半分は白っぽく、薄茶の陰影がついている。背中の中央部分には、ぼんやりとした円や楕円の斑点が一列に続いている。このヘビは、ブラッド・パイソンのアイボリー変異体と同じように、ボールパイソンの白系変異体なのかもしれない。ミントパールの遺伝法則は明らかになっていない。

モハーベ

 モハーベ変異体は、レッサー・プラチナ、ファントム、ラッソ、プラチナとともに、プラチナ・グループに含まれる一種である。モハーベ変異体は、比較的シンプルではっきりとした模様の清らかなヘビである。淡い模様の周囲には、幅広の黒い境界線がある。側面の淡い模様は、腹部の両端につながっていて、下の部分は細く、上の部分は丸く広がっている。普通は、側面にあるそれぞれの斑点の中央に、大きな黒点が一つある。幼体の淡い模様は黄色で、それは年齢とともに薄くなり、成熟すると緑っぽい象牙色になる。幼体の地色は茶色もしくは赤茶色で、これもまた成長とともに緑っぽい黄土色になる。

 モハーベの外見は、他のプラチナ・グループの変異体と同じく、共優性形質として遺伝する。モハーベとモハーベを交配すると、リューシスティックの外見を持った「スーパー・モハーベ」が誕生する。モハーベ、レッサー・プラチナ、ラッソ同士をかけ合わせても、リューシスティックの子供が誕生する。

ノーマル

 ボールパイソンにとって、何がノーマルなのかを正確に定義するのは難しい。ボールパイソン種はきわめて多様な形態を持つ生物であり、多彩な外見を持っている。変異体のいくつかは局地的なものかもしれないが、ボールパイソンの地理的な発生源はほとんど知られておらず、局地的な変異を数値で表すことは不可能である。ジャングル変異体やワイド・ストライプ変異体のように、偶然生まれるものもいる。そうした発達上のミスは、遺伝的な基盤を持っていない可能性もあるし、また、多元遺伝子や後成遺伝子が複雑に関与した結果、現在のような単純な交配実験ではその真相が解明できないだけだという可能性もある。

 一般的に言って、ノーマル体のボールパイソンは、極上に美しいものから比較的平凡なものまで、さまざまである。我々はいろいろなノーマル体のボールパイソンを見ても、そのほとんどが魅力的だと思うし、なかには高価で珍しいデザイナー変異体よりも魅力的なものもいる。この本のなかには、ノーマル体だと思われるボールパイソンの写真も数多く含まれている。

パラドックス・アルビノ

 ほとんどの場合、パラドックス・アルビノは遺伝可能な形質ではない。これは予期せぬ部分に黒の色素があるアルビノ風のヘビである。我々の知るかぎり、パラドックス・アルビノはアフリカで一例報告されたのみであり、これが自然捕獲されたものか、飼育繁殖されたものかは不明である。

 一般的に、パラドックス・アルビノはアルビノとヘテロ・アルビノ、もしくはヘテロ・アルビノ同士を交配した時に偶然誕生するものである。ほとんどのパラドックス・アルビノはヘテロ・アルビノだということが判明している。こうした場合には、パラドックスの状態は“異型接合性が部分的に発現したもの”だと言うことができる。パラドックス・アルビノの一部はキメラ遺伝子(複合遺伝子)だという可能性もある。

 ボールパイソンの世界においては、パラドックス・アルビノの外見にもっとも近いのは、コーラルグローやバナナ変異体である。両方ともアルビノ系の変異体で、模様部分に黒のうろこが散乱している。しかし、パラドックス・アルビノにおいては普通の白と黄色のアルビノ現象が見られるが、これら二つの変異体はそれとはかなり異なる外見を持っている。

パラゴン

 パラゴン変異体は、黒っぽい目をした淡い色のヘビで、皮膚に暗色の色素がない。模様自体は普通だが、模様の薄い部分は淡く黄色っぽい黄褐色で、濃い部分は淡い赤茶色である。パラゴンはバーガンディ・アルビノによく似ているが、全体的にもっと色が薄い。もっとよく似ているのはトッフィー変異体だろう。ひょっとすると両者は同じものかもしれない。パラゴンの遺伝法則はわかっていない。

パステル

 パステル変異体は、もともとは「パステル・ジャングル」と呼ばれていた。しかし、名前が短縮されて「パステル」となり、一般に使われるようになった。パステルの外見は共優性形質として遺伝する。パステルの外見を作り出す対立遺伝子がホモ接合した状態は、一般に「スーパー・パステル」と呼ばれている。スーパー・パステルはもともとは「オパール」と呼ばれていた。現在では、オパールもスーパー・パステルも広く使われている。

 自然捕獲されたヘビの多くがパステルとみなされており、レモン・パステル、ブロンド・パステル、エンキ・パステルといった系統を生み出している。異なる種類のパステル同士を組みあわせた交配がおこなわれており、その多くが互換性があると考えられている。

 一般的に、パステルは色の薄いヘビだと言える。ジュブナイル体の頃は明るい金色か黄色で、頭部の中心はノーマル体よりも色が薄く、胴体の下半分にはメラニン色素の陰影がない。普通は濃い模様の部分も、中心部が薄くかすれている。

 パステルは、デザイナー変異体を作る際に、色を明るくしたり、色を強調したり、頭部の模様を強化したりするために、広く使われている。こうした組み合わせの多くは華々しいものである。

パターンレス

 これは体色が茶〜琥珀色で、基本的に濃い模様のないボールパイソンである。胴体の上半分(特に体の後半部分に集中している)には、暗色の色素の染みがちらばっている。背中の中心部は側面上部よりも色が薄いため、脊椎の縞模様が目立っている。

 一番最初のパターンレスは、ノーマルだけが産まれるはずだったクラッチ(卵)のなかから偶然に誕生した2匹だった。しかし、そのうちの1匹しか生き残らなかった。その後しばらくして、さらに2匹のパターンレスがアフリカから輸入された。この変異体の遺伝法則は明らかになっていない。

ファントム

 ファントム変異体も、プラチナ・グループに含まれる変異体である。模様に関してはレッサー・プラチナやモハーベと似ているが、全体的な色あいに関しては、3つのなかでファントムが一番濃い。ファントムの外見は共優性形質として遺伝する。ファントム同士をかけ合わせると、「スーパー・ファントム」という非常に変わった色のヘビが誕生する。これは背中に象牙色の縞があり、側面には淡い円形の模様がある。ファントムとレッサー・プラチナを交配すると、青目・リューシスティックが誕生する。

パイボールド

 初めて市場向けに繁殖されたのはアルビノ変異体だったが、ボールパイソン変異体の人気を一躍高めた立役者と言えば、パイボールド変異体になるだろう。パイボールドは1980年代半ば頃から飼育されていた。1992年までは、5〜6匹しか輸入されていなかった。アフリカの輸出業者エマニュエル・ノア氏が、2匹の若いパイボールドをピート・カール氏に売った。そして、カール氏が、この素晴らしい外見は単純劣性形質として遺伝するということを示した。

 パイボールドの典型的な特徴は、真っ白な領域が比較的ノーマルな外見のヘビに重なっているという点である。パイボールドの頭部および首前部は普通の色だが、腹部の表面全体は純白である。背面の白の面積は、それぞれのヘビによって異なる。白の面積が5%のものもいれば、95%のものもいる。白の面積と模様は、ヘビが成長しても変わらない。生まれたばかりのヘビの普通に色がついている皮膚の部分は、とても明るい黄とオレンジである。通常、色がついている部分は、年とともに濃くなる。パイボールドにおける白の領域は、ランダムで法則性はないようだ。白の面積が5%のパイボールド同士を交配させても、白の面積が90〜95%の子供が産まれる場合もある。

 パイボールドを親に使って、新たなデザイナー変異体を作り出そうとする計画は現在でも続いている。我々はアルビノ・パイボールドやパステル・パイボールドを見たことがあるが、今後も多くの種類が登場してくるだろう。

ピンストライプ

 ピンストライプ変異体の外見は優性形質として遺伝する。その表現型は、この外見を作り出す対立遺伝子がヘテロ接合した時もホモ接合した時も同じである。若いピンストライプは金色もしくは濃いイエローブラウンで、黒の細い線模様がある。金色の背面を区切るような一対の線があり、側面には垂直の線がある。そうした線の多くには、白のふちどりがついていて、背面の線から腹部の両端までつながっている。頭頂部は茶色で、側頭部は黄色である。

 外見は年とともに濃くなる傾向にあり、ジュブナイル体と比較すると、成体は物足りない感じになる場合もある。

 ピンストライプは、いくつかの美しいデザイナー変異体を作り出すのに使われている。

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