Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

デザイナー変異体  アルビノ〜スノー

アルビノ

 アルビノは一番古くからいる変異体であり、値段も手頃で、いくつかのデザイナー変異体を作り出すのに使われている。もっとも有名なのは、アルビノ/スパイダー、アルビノ/クラウン、スノーである。アルビノは非常に魅力的な外見をしているが、単純劣性形質として遺伝するので、デザイナー変異体を作る計画においては、その能力をフルに発揮できていない。アルビノを使ってデザイナー変異体を作る計画もいくつか進んでいて、それらは二重へテロ状態になっている。

スーパー

 「スーパー」とは、その外見が他の同種のヘビよりも優れているという意味ではない。そうではなく、「スーパー」という言葉は、中黒点(・)のついた変異体名において、共優性形質がホモ接合状態になっていることを示すものである。たとえば、「スーパー・モハーベ」とはリューシスティックの外見をしたボールパイソンで、モハーベとモハーベを交配して作られたものである。

 「スーパー」という言葉をこうした意味で使用したのは、アミメ・パイソンのタイガー変異体(共優性)が最初だった。タイガー変異体同士を交配して、新しい外見が誕生した時、それは「スーパー・タイガー」と名づけられ、現在に至っている。その当時、共優性形質についてはほとんど知られておらず、当時の人にとっては、共優性形質はきわめて珍しいものだったのだ。

 ボールパイソンのワイルド変異体のなかで、初めて共優性形質として認められたのは、パステルだった。当初、パステル同士が交配して産まれたヘビは「オパール」と名づけられた。その名前は短命に終わり、タイガーとスーパー・タイガーの伝統にのっとって、「スーパー・パステル」という名前が使われるようになった。この命名方式は何の問題もなかった。ただし、ボールパイソンのワイルド変異体の多くが共優性遺伝するということが判明したために、結果として、現在は「スーパー」だらけになってしまった。

 実際、我々が唯一気に入らないのが、中黒点(・)のついた名前が多すぎるということである。共優性形質を持った多くのヘビに名前をつける場合に、ワイルド変異体の名前の前に「スーパー」という接頭語をつける方法は、たしかに便利ではある。最近では、これを遺伝学の用語として無意識のうちに使ってしまう人もいる。たとえば、「エイトボールは、共優性ブラックパステルのスーパー体だ」というふうに。遺伝学の本で、スーパーという単語の意味を調べないように。

 本書では、「スーパー」をデザイナー変異体に含めている。なぜなら、ほとんどの場合、スーパーな外見は自然界では報告されず、飼育繁殖においてのみ発見されるからである。

リューシスティック

 1990年代のはじめ頃には、ボールパイソンの外見の多くが共優性形質として遺伝するなんて、誰も考えていなかった。それに、リューシスティックのボールパイソンがいるなんて、思いもしなかった。なにしろ、それまでの数十年の間に百万匹以上のボールパイソンが輸入されていながら、リューシスティックの報告例は一件もなかったのだから。その後の短い期間で、半ダース以上の異なるリューシスティックの系統が飼育環境で確立され、それらのほとんどが共優性形質のホモ接合状態になるとは予想もしていなかった。

 リューシスティックのヘビは白、あるいはほとんど白に見える。「リューシスティック」(短く「リューシ」と呼ばれることもある)という言葉は説明的な単語であり、さまざまなリューシスティック変異体の一つに限定して使うべきではない。「青目・リューシスティック」や「黒目・リューシスティック」なら問題ないが、特定の系統を指して「リューシスティック」と言うことはできない。

 青目・リューシスティックは、プラチナ・グループの変異体を交配することで作られる。黒目・リューシスティックは「スーパー・ファイアーボール」と呼ばれている。他にもリューシスティックの系統はあり、アイボリー(スーパー・イエロー・ベリー)、パール(スーパー・ウーマ変異体)、ホワイト・ダイアモンド(スーパー・ラッソ)、スーパー・モハーベなどである。おもしろいことに、これらのリューシスティック変異体は全て、共優性形質のスーパー体である。

 リューシスティックのデザイナー変異体は、他にもいる。ゴースト/スーパー・モハーベ、ラッソ/モハーベ、スノーなどである。おもしろいことに、ファントムとレッサー・プラチナをかけ合わせると、青目・リューシスティックが誕生するが、スーパー・ファントムはリューシスティックではない。

 自然で捕獲されたことのある唯一のリューシスティック変異体は、アイボリー(スーパー・イエロー・ベリー)である。他のリューシスティックは全て、飼育繁殖において発見されている。

 リューシスティックの系統同士をかけ合わせると、どんな結果になるのか、おもしろそうである。たとえば、こういうのはどうだろう。まず、プラチナ・グループのなかの異なる2種類(たとえばラッソとモハーベ、あるいはファントムとレッサー・プラチナ)を交配させて青目・リューシスティックを作り出す。そのリューシスティックが成長して、ノーマル体とかけ合わせたとしたら、そのうちの何%かはリューシスティックになる可能性があると考えられないだろうか? これはなかなかおもしろいアイデアである。我々がプラチナ・グループと呼んでいるヘビの外見は、異なる遺伝子の変異によるものなのか、それとも、同じ遺伝子の異なる対立形質によるものなのか? 先ほど挙げた繁殖をおこなって、どのような子孫が誕生するかを観察すれば、プラチナ・グループの外見の遺伝的な基盤が明らかになるかもしれない。

パステル

 パステルは、デザイナー変異体を作り出す際の材料として、一番多く使われているワイルド変異体だろう。具体的には、パステル/クラウン、パステル/パイボールド、パステル/スパイダー(バンブルビー)、パステル/ピンストライプ(レモンブラスト)、パステル/モハーベ、パステル/レッサー・プラチナ、パステル/ゴースト、パステル/バターなどである。種類が多すぎて、全ての名前を挙げることはできない。しかも、その数はさらに増え続けている。あまりにも多くのパステルが出回るようになった結果、ほとんどのパステルは手頃な価格で手に入るようになった。また、パステルは共優性形質である。

 パステルと何かを交配させると、その結果産まれるデザイナー変異体は、ほとんど必ず、体色が明るく強調され、珍しい頭部の模様が追加・強調される。スーパー・パステル自体も美しいヘビだが、スーパー・パステルも素晴らしいデザイナー変異体を作るのに利用されている。

スノー

 飼育繁殖がはじまった時から、一番最初にスノー変異体を作るという競争がおこなわれていた。「アルビノ・アザンシック」のデザイナー変異体を意味する「スノー」という言葉は、コーンスネークのブリーダーからボールパイソンの世界に入ってきた。この言葉をボールパイソンに適用するのは、正にぴったりだった。

 我々ブリーダーは、完璧なアルビノの系統を持っていた。問題は、アザンシックと認定された異なる系統が3つもあったことだった。我々は最初のアザンシックを持っていて、そのVPI・アザンシックは遺伝可能な外見を持っていると初めて認定された系統だった。その後しばらくして、ジョリフ・アザンシックとスネークキーパー・アザンシックの系統が登場して、アザンシックと認定された。これら3つの系統は立派なアザンシックの外見をしていて、ほんのわずかな違いがあるだけである。これらの系統同士をかけ合わせたところ、3つの系統は別物であり、互換性はないことが判明した。では、3つのうちで、どの系統が最高のスノーを作り出すだろうか?

 ジョリフ・アザンシックを使って作られた最初のスノーは、ちょっとした論争を巻きおこした。明らかに淡い黄色の色素が入っていたからだ。見た目という点では、ボールパイソン版のスノー・ボア・コンストリクターといった感じだった。それはとても美しいヘビで、目はピンク色で、体はほんのりと淡い黄色だった。しかし、まあ、期待されていたほど白くはなかった。

 二番目のスノーは、スネークキーパー・アザンシックの系統から誕生した。このスノーはピンクの目をした白いヘビで、インターネットを通じて、多くの賞賛が寄せられた。遂にスノーを作るという長年の夢が実現したようだった。しかし、この系統は年をとるにつれて、わずかに黄色の色素が混じるようになった。とは言え、黄色の影響はわずかであり、全体的な外見は白いヘビのままである。

 最後に孵化したスノーは、VPI・アザンシックの系統から誕生したものである。孵化した時の体色は白く、ほんのかすかに黄色の色素が認められる程度だった。2歳になった今、スノー変異体のなかでは、このヘビが一番白い。

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