Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P251  基礎知識

 ボールパイソンはさまざまな有機体が原因となって病気に陥ることがある。その有機体とは菌類、原生動物、細菌、マイコプラズマ、ウイルスなどであり、我々哺乳類に感染するのと同じ微生物類である。一般的に、ボールパイソンに感染する有機体は爬虫類のみに感染するタイプのものなので、我々がボールパイソンの病気にかかったり、ボールパイソンが我々の(あるいは齧歯類の)病気にかかったりすることはない。

 ヘビの口のなかで発見され、病気の原因となることで知られている主な細菌は、グラム陰性菌というグループに所属している。これは哺乳類に病気をひきおこす原因となる主な細菌(グラム陽性菌)とは対極にあたるものである。こうした違いの結果、抗生物質に関する研究は、グラム陰性菌ではなく、グラム陽性菌を治療する(人間にとって役に立つ)抗生物質を開発する方向で進められてきた。

 健康なヘビが持っている免疫システムの能力には、我々はいつも驚かされる。我々の経験と観察によると、怪我や切開手術によりヘビが何かに感染したというケースは稀である。噛まれたり火傷をしたヘビや、傷口がぽっかりと開いた(体腔にまで達するような深い傷の場合もある)ヘビを何度も見てきたが、そうした傷が感染したのを見たことはほとんどない。これが哺乳類の場合なら、同じような怪我をしたら、ほぼ確実に感染してしまうだろう。

 ヘビが病気になったり、傷口が感染してしまったら、何よりも大切なのは、その原因である有機体(群)を特定し、その感応性と抗生物質に対する抵抗力をテストし、原因生物に対して最大の効力を発揮する抗生物質を使ってヘビを治療することである。実際には、飼い主も獣医も同じように手順を省略して、さまざまなグラム陰性菌に効果のある汎用性の抗生物質を使って、病気のヘビを治療することになる。

 ボールパイソンの感染治療の際によく使われる抗生物質は、アミカシン、エンロフロサキシン、スプロフロサキシン、セフタジジム、メトロニダゾール、クロラムフェニコールなどである。抗生物質のなかには、注射で投与するものもある。筋肉注射をすると、背中の中心線の両側にある筋肉の広い範囲(横突棘筋や最長筋を含む軸上筋肉)に正しく薬を与えられる。注射する箇所は、ヘビの胴体の前半部分でなければならない。経口投与する抗生物質もある。薬の錠剤(あるいは砕いた破片)は、ヘビの口の奥に入れる。もしくは、投与する錠剤を砕いて粉状にし、水に溶かして(あるいは浮かべたままで)、注射器とチューブを使ってヘビに飲ませることもできる。

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