Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P214  よくある失敗例

 まず最初に、繁殖に失敗する理由から考えてみよう。ボールパイソンが健康で幸福になるために必要な一般的な飼育条件については、本書の別項で述べてある。単にペットとして飼育する場合でも、繁殖用に飼育する場合でも、その条件に変わりはない(人間だって同じことである)。ボールパイソンが不健康で不幸な状態なら、そのヘビは繁殖することはないだろう。

 ボールパイソンが繁殖に関係した生理的・ホルモン的な1年周期を維持するためには、周囲の環境から刺激や合図を受け取る必要がある。飼育環境が全く変わらず、温度・湿度・昼夜の周期も常に一定で、1年じゅう全く同じ間隔で餌を食べているボールパイソンは、繁殖することはないだろう。

 メスのボールパイソンが繁殖できる時期を予想できると思い込んでいる飼い主が時々いる。こうした予想を立ててしまうと、実際にヘビが何をしているのかが見えなくなり、正確な判断ができなくなってしまうことがある。あるメスのボールパイソンが2月に排卵したからと言って、来年も2月に排卵するとは限らない。また、あるメスが2月に排卵したからと言って、他のメスも同時期に排卵するとは限らない。

 成体になってから自然捕獲されたメスのボールパイソンは、飼育環境下では繁殖させるのが難しい場合がある。そうしたメスのほとんどは、飼育環境に十分慣れていて、餌もよく食べ、周囲の環境に明らかに満足しているのに、繁殖することはない。ごく少数のヘビは最終的に落ち着いて繁殖するようになるが、そうなるまでには通常3〜5年ほどかかる。

 自然捕獲したメスが繁殖できないというのは、おもしろい現象である。このことは、全てのパイソン種やボア種、及び他の多くのヘビについてもあてはまる。この現象をひきおこす生理学的な理由は、明らかになっていない。一方、自然捕獲されたオスの場合は、話は別である。自然捕獲されたオスのほとんどは、飼育環境でも繁殖することができる。

 最後の注意点だが、繁殖を成功させるためには、オスとメスが必要である。これは、なぜボールパイソンが繁殖しないのかということに対する、一番よくある答えかもしれない。つまり、ただ単に交尾する相手がいないのだ。どうしてこんなことになってしまうのか? まず第一に、ヘビが売買された時に間違いがおきたことが考えられる。ヘビが入荷した際に、性別の確認がおこなわれない場合もある。さまざまな理由により、ケージにつけられた名札が交換されることも多く、そうした際に細かい情報が無視されてしまうこともある。我々はこうした細かい情報の重要性を誰よりも理解しているはずである。しかし、正直に告白するが、我々自身も、ある特定のボールパイソンを繁殖させようとして、複数の相手と交尾させる努力を重ね、何年も失敗を繰り返した挙句、そのヘビの性別を間違えていたことに気づくといった苦い経験を何度も体験している。同じケージに入れる2匹のヘビの性別をしっかりと確認するためには、わずか3分あればすんだのに、その確認作業を怠ったために、数年間の努力が水の泡だったと気づいた時の失望感たるや、相当なものである。

 

P215  繁殖の管理法

 我々のボールパイソン繁殖プログラムの原則は、失敗をひきおこす可能性のある一般的な問題を避けるということである。我々が扱っているのは、主として、人工的な環境で誕生・飼育されたボールパイソンである。それが健康で幸福なヘビかどうかにも注意を払う。そして、温度・昼の時間の長さ・餌の量・体重・餌やりの頻度といった、数多くの環境条件を季節ごとに変えている。建物自体の湿度や窓から差しこむ日光については、我々がコントロールできないので、外の天気や季節の変化に任せている。

 我々は過去10年間に渡って、ボールパイソンの巨大コロニーを管理してきたが、我々が管理している成体のボールパイソンの全てが、同じ条件で飼育されているわけではないというのが事実である。時には、繁殖への効果を確かめるために、さまざまな環境要因を意図的に変更して実験をおこなうこともある。しかし、我々のコレクション(ボールパイソン専用の2つのビルのなかにある6つの広いエリア)においては、温度・ケージの種類・光の強さ・餌やりのスケジュール・交尾相手の導入など、数多くの変化要因があって、その全てをコントロールすることはできない。我々はこうしたさまざまな変化要因を厳密にコントロールすることを重要視していないが、それでもちゃんと目的のヘビを繁殖させることに成功している、と言ってもいいだろう。このことは、「人工的な環境で育てられた健康で幸福なボールパイソンは、幅広い環境で繁殖できる」という我々の意見とも一致する。これが我々の観察と経験である。ここでは、我々がボールパイソンを繁殖する際のガイドラインを簡単に説明していこうと思う。

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