Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P216  オスの成体

 オスのボールパイソンは一年中、精子を作っているようだ。解剖の結果、オスは冬になるたびに性腺が再活性化する(つまり、精巣のサイズが大きくなる)ことが確認されている。そうした場合には、さらに多くの精子を作れるようになるかもしれないが、オスは普段でも大量の精子を作り出している。オスの体温が下がらなくても、精子の受精能力は一年中変わらない。精巣が巨大化すると、テストステロン(雄性ホルモン)の値が増大し、今度はそれによって性本能が高められるようだ。我々の観察したところ、オスのボールパイソンのほとんどは、受け入れ態勢の整った相性のいいメスと一緒にすると、季節に関係なく交尾行動をするようになる。

 オスのボールパイソンは、非常に若い時期から受精能力のある精子を作り始める。一般的に言って、オスが性的な活動を始めるのは、体重が約600グラム以上になる2年目である。最近では、早熟のオスは1歳以下の年齢でも繁殖可能になる場合があることを複数の飼い主が報告している。こうしたオスは最初の6ヵ月間に大量の餌を食べ、可能なかぎり大きく成長したものである。冬が来た時にちゃんと交尾活動ができるように、この最初の6ヵ月の間に、若いオスと成熟したメスとを引き合わせておく必要があると語る飼い主もいる。こうした若いオスは、年齢が7〜9ヶ月で、体重が約350グラムになると、成熟したメスに求愛して、ちゃんと交尾できるようになる場合がある。

 しかし、交尾行動を全く示さないオスもいる。こうしたヘビに求愛・交尾行動をさせるための方法は、今のところ不明である。ヘビのなかには、性的に成熟するのは遅かったものの、年を重ねて(4〜5歳)体が大きくなってからは、すぐれた種馬になるものがいる。こうしたスロースターターのなかには、初めて交尾活動をおこなうと、その後は積極的に交尾にはげむようになるものもいる。逆に、ずっと交尾活動に関心を示さないヘビもいる。そうしたヘビはテストステロン値が低いか、何か生理学的な問題を抱えているのかもしれない。

 時には、支配的な性格の年長のヘビが近くにいるだけで、他のヘビが交尾行動を控えてしまう場合がある。あるケージのなかに大きなオスがいると、別のケージにいる若いオスの交尾活動が(時には給餌活動も)止まってしまうこともある。この場合は、フェロモンの匂いが原因になっていると考えられる。しばらく前まで他のオスと一緒にいたメスに対して、襲いかかったり逃げ出したりするオスを見たこともある。

 我々はオス同士を競わせたりはしない。ボールパイソンのオスは、他のパイソン種ほど好戦的ではない。一般的に言って、今まで一度も戦った経験がなく、ほぼ互角の力を持ったオス同士だけが喧嘩をおこなう。我々は立派に成熟したオス同士を直接引き合わせたことはない。我々の観察したところ、ボールパイソンや他のパイソン種においては、戦いに完全に敗北した若い個体は、その後何年間も求愛行動を示さない場合がある。

 オスはたった一回の交尾で、(卵子を受精させて)クラッチを作り出すことができる。一回の交尾で出された精子は、排卵及び受精がおこるまで、メスの体内で4〜6ヶ月間生きていることができる。

 一匹のメスに対して複数のオスが交尾した場合は、普通、一番最初に交尾したオスが、全ての有精卵の父親となる。メスの卵管漏斗にオスの精子が入り込むと、卵管内で免疫反応がおこり、その後に侵入してきた新たな精子を攻撃してしまうらしい。しかし、父親が複数存在するといった事態は、ボールパイソンにおいてもおこりうる。生殖サイクルの初期に、メスが2匹以上のオスと立て続けに交尾した場合には、こうしたこともおこりうるようだ。

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