Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P218  クラッチの大きさと母親の大きさ

 我々が以前飼育していた自然捕獲されたメスは、たった1個の卵しか産まなかったことがあったが、このように卵の数が少ないという報告例は他にも存在している。我々が飼育繁殖していたヘビは、2個しか卵を産まないことが何度かあった。我々が知っている最大のクラッチは、卵の数が17個だった。飼育環境にあるボールパイソンのほとんどのクラッチは、卵の数が4〜12個である。

 クラッチの大きさ(卵の数)はヘビによって異なる。トーゴ及びベニンで自然採取された22個のボールパイソンのクラッチは、卵の数が1〜11個で、1クラッチあたりの平均数は6.5個だった(1994年)。ベニンで採取されたボールパイソンの87個のクラッチは、卵の数が1〜11個で、平均数は6.29個だった(2001年)。ガーナで採取された31個のクラッチは、卵の数が4〜15個で、平均数は7.9個だった(1997年)。

 我々が飼育しているボールパイソンの過去10年間の卵の平均重量は、1個あたり約92gである。しかし、クラッチの大きさは個体によって異なる。1kgの小さな卵を12〜13個産むメスもいれば、同じ1kgでも大きな卵を9個産むメスもいる。我々が飼っているヘビの多くはガーナ原産のものだが、ガーナの動物は他の国の動物よりも大きく、より大きな卵を産むという報告もある。我々は『Ball Python Manual』(1994年)のなかで、トーゴ及びベニンで自然採取した160個のボールパイソンの有精卵は、重さが68〜103gで、平均重量は86gだと報告している。

 クラッチの大きさとメスの大きさには、密接な相関関係がある。クラッチの重さは、産卵後のメスの体重の16.8〜64.9%とさまざまである。我々の観察によると、メスが最適な体重にある時、クラッチの重さは、産卵後のメスの体重の40〜50%とほぼ同じ値になるようである。つまり、重さ400gのクラッチを産んだメスは、産卵後の体重は800〜1000gになっているのが望ましい。重さ1.4kgのクラッチを産んだメスなら、産卵後の体重は2.8〜3.5kgになっているのが理想的である。

 こうした相関関係を考慮に入れると、メスが太っているかどうかを的確に判断することができる。たとえば、体重3kgのメスは1kgのクラッチを産むのが望ましい(産卵後の体重は2kgになる)。もしそのメスが0.5kgしかないクラッチを産んだとすると、産卵後の体重は2.5kgとなるので、飼い主はそのメスを0.5〜1.0kgほどダイエットさせることを考えたほうがいいだろう。

 この相関関係を考えると、「より大きなメスのほうが、より大きなクラッチを産む」という明らかな結論が導き出されるが、それはある程度までの話である。メスのボールパイソンは、最初の数年間でかなり急速に成長することができる。我々の観察したところ、一般的に言って、飼育繁殖されているメスのボールパイソンは、5年目になる頃には、最大サイズの90%以上にまで成長するものである。その後の三十数年の成長率は、ほとんど無視してもいいくらいのものである。メスのボールパイソンのほとんどは「10個の卵を産めるヘビ」にまで成長する可能性を持っているが、成体になってからは2〜3kgの体重を維持するのが望ましいということを、飼い主は念頭に置いておかなければならない。それ以上餌を与えても、「14〜15個の卵を産めるヘビ」になるとは限らないし、逆に、全く繁殖しなくなる可能性もある。

 我々は餌を与える時に、常にこの相関関係を念頭に置いている。もちろん、ヘビはどんどん成長するので、最終的な体長や最適な体重を知ることはできず、そのヘビがどんな大きさのクラッチを産むのかもわからない。だから、若いメスには餌をたくさん与えて、なるべく成長させるようにしている。我々はメスが初めて産んだクラッチの重さを記録して、それが産卵後の体重の何%を占めるのかを計算しておく。もし初めてのクラッチの重さが産卵後の体重の25〜40%だったとしたら、そのメスは太っているということがわかる。メスが3〜4回目のクラッチを産む頃には、そのメスが産む卵やクラッチの大きさがある程度わかってくるので、そのメスの理想的な体重もわかるようになる。

 繁殖するメスの理想的な体重が明らかになれば、その体重を維持するために、メスに与える餌の量や頻度を調整していく。それ以上与えても、体重過多になるだけである。体重過多になると、メスの排卵が早まって、小さな無精卵を産むようになる場合がある。肥満したメスは、産卵そのものをしなくなる場合も多い。

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