Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P223  ネスト・ボックス(専用の巣箱)

 妊娠したメスに適切な産卵場所を与えるというのは、よい飼育法である。ボールパイソンのメスは産卵するために、できるだけ最適な場所を選ぶものである。メスは温度・湿度・安心感といった複数の要素を吟味して、どこが“最適”な場所なのかを決めているようだ。

 なぜ理想的な場所(あるいは場所の選択肢)を準備するのかというと、ボールパイソンの一般的な飼育ケージでは、選択肢が限られているからである。メスは基本的に、乾燥しすぎて人目にさらされる場所(ケージの大部分)か、水分の多すぎる場所(水の入ったボウル)のどちらかを選ばざるをえない。選択肢がその2つしかない場合、メスはボウルのなかで産卵してしまうことがある。もちろん、これは悲劇である。通常、水に濡れた卵は死んでしまうからだ。メスが水の入ったボウルをひっくり返して、濡れた新聞紙の上で卵を産んだ場合も、普通は卵にとって致命的な結果となる。何もない乾燥したケージは例外として、何らかの選択肢を与えられたボールパイソン(及び他のパイソン種)の妊娠したメスが、水の入ったボウルに産卵したという例は聞いたことがない。

 ほんの少し湿ったミズゴケの入った容器のなかで、ボールパイソンのメスが卵を産まないことはほとんどない。実際には、最初に容器のなかに入れる時には、ミズゴケは少し湿っていて、メスが産卵する頃には、乾燥しているのが望ましい。容器そのものは、上蓋がついているタイプがいいだろう。ネスト・ボックスに出入り口がついている場合には、それが十分な大きさであることを確認するように。出入り口の直径は、妊娠したメスの胴体の一番太い部分の2倍が楽に通れるくらいでなければならない。出入り口が大きいと水分の蒸発も多いが、水分は霧吹きを使って補充することができる。妊娠したメスは狭い出入り口に体がつかえてしまうことがあり、致命的な結果となる場合もある。

 温かいネスト・ボックス(31.5℃)と涼しい容器(27℃)の2つの選択肢を与えられると、通常、妊娠したメスは温かい場所で卵を産む。ネスト・ボックスは一つだけ与え、それをケージの涼しい部分に置くのが一番いいと我々は考えている。

 妊娠したメスも排尿はするし、少量の尿酸を排泄し、小さな糞を排便することもある。だから、ネスト・ボックス内のミズゴケが清潔かどうかをチェックすることが大切である。たいていは大丈夫なのだが、最初の頃にメスがミズゴケに排尿してしまうと、強い匂いを発するようになり、産卵する時期がきたら、メスは別の場所を選んでしまう可能性もある。

 我々はネスト・ボックスよりも、「ネスト・ケージ」を使うことを好むのだが、それにはいくつかの理由がある。その理由の一つは、我々が使用しているボールパイソン用の飼育ケージでは、卵のクラッチに必要な湿度を保持することができないからである。実際、卵を発見して、産卵から12時間以内にメスから卵を取り上げている限り、低湿度による問題が発生するのを防ぐことはほぼ可能である。しかし、適切な環境のネスト・ケージがあらかじめ設置してあれば、卵を発見するのが数日遅れたとしても、卵は無事だろう。我々の日常生活は予測不可能なことが多いので、産卵後12時間以内に卵を発見できるかどうか、自分たちにも自信がない。

 我々がネスト・ケージを好むもう一つの理由は、メラミン樹脂製のラックにぴったりと収まっているケージには、適切な大きさのネスト・ボックスが入らないからである。ネスト・ボックスを使うのをやめて、全てのケージをネスト・ボックスと見なすようにしたのも、それが最大の理由だっただろう。しかし、何も問題はない。メスは自分の気に入ったあらゆる場所で産卵し、卵も無事である。

 我々の経験では、水の入ったボウルのなかでボールパイソンが産卵したことは一度もないが、念のため、ネスト・ケージの前面には小型のボウルを置いている。妊娠したメスはたくさんの水を飲むので、ボウルには新鮮な水を一杯に入れておくことがとても大切である。

ボールパイソン大百科 目次に戻る

トップページに戻る

inserted by FC2 system