Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P253  健康問題

 飼い主の人間の場合と同じように、ボールパイソンが感染・罹患する可能性を持った健康被害の症状は無数に存在している。飼い主がよく遭遇する病状のうちのいくつかを、以下に示す。

 

呼吸器疾患

 呼吸器疾患や肺炎の症状は、細菌、ウイルス、カビ、寄生虫、高すぎる湿度、低すぎる湿度、煙や刺激臭に慢性的にさらされたこと、さらには、過度の肥満や鼻づまりなどによってもひきおこされる。飼い主が問題に気づくのは、ヘビの呼吸が荒くなってからのことが多い。以下に挙げるのは、ボールパイソンが呼吸器疾患に陥っているかもしれないことを示すさまざまな兆候である。

 通常、一番最初に気づく兆候は、口を開けて呼吸していることである。普通、健康なヘビは口を閉じて呼吸している。ヘビが口で呼吸する原因は、鼻づまりによるもの、つまり、鼻孔の内側に乾燥した鼻水や粘液がつまっているせいである(注:生まれて間もない頃に鼻先をこすりつけたために、鼻孔に傷がついているヘビは、口を開けて呼吸することがある。これは呼吸器疾患を示すものではない)。ボールパイソンが脱皮する時には、鼻孔の内側の皮膜も脱皮する。そのため、この皮膜が残ってしまって、鼻孔がつまってしまう場合がある。

 鼻孔や唇の周辺に液体が見られる。息を吐き出した時に、鼻の穴から泡が出る場合もある。泡だらけの唾が、口の端や周辺に見られる。

 ヘビの咳やくしゃみの音が聞こえる場合もある。ヘビが咳をするところを目撃したら、濃い粘液が声門(声帯の間にある隙間)から吐き出されるのに気づくかもしれない。ヘビが咳やくしゃみをするところを見聞きしなくても、注意深い飼い主ならば、ケージの側面(特にガラスの表面)に乾いた唾や粘液がこびりついているのに気がつくことだろう。

 ヘビの呼吸がいつもより速くなる場合もある。注意深く観察すれば、吸気と呼気がいつもより強調されているのに気がつくかもしれない。

 とても重要な兆候は、ヘビが休息している時の姿勢である。普通、肺炎や呼吸器疾患を抱えているヘビは、胴体のほとんどをまっすぐに伸ばした(あるいは、ほんの少し曲げた)珍しい状態で休むものである。肺炎にかかっているヘビは、頭部を上に傾けていることも多い。これはスターゲイジング(※健康なボールパイソンの項を参照)のように極端なものではなく、頭部と鼻先を30〜45度くらいに傾けた状態である。病気のヘビは、ケージの角部分で鼻先を支えるようにして休んでいる場合もある。

 健康なボールパイソンの歯茎はピンク色である。そうした色になるのは、細胞内を巡っている血液のなかにある、酸素を多く含んだヘモグロビンのせいである。呼吸器系統に大きな問題のあるボールパイソンの歯茎は、青みがかっている。この状態はチアノーゼと呼ばれていて、酸素が不足していることが原因である。歯茎の側面を指で押して離すと、指で押さえた部分が青白くなる。健康なヘビの場合、すぐに歯茎がピンク色に戻るが、呼吸器系に問題のあるヘビの場合、元の色に戻るのに10秒以上かかることもある。

 大切なことは、呼吸器疾患を早期に見つけ出すことである。ヘビが手遅れになる前に、適切な処置をおこなうこと。ヘビを注意深く観察していれば、各症状の始まりに気がつくことができるし、その症状がどれくらいのスピードで進行しているのかもわかるだろう。そうした情報は、獣医が問題の原因を診断するのに、とても役立つだろう。

 ここでも、黄金則が当てはまる。すなわち、あなた自身が病気になった時にするように、あなたのヘビに対してもすること。あなたの目の前でヘビがくしゃみをしたり、たまたま頭を上に傾けていたからといって、それがすぐさま呼吸器疾患やその前兆であるとはかぎらない。人間の子供がくしゃみをしたからといっても、すぐに小児科医のところに連れて行くようなことはしないだろう。しかし、その子が一日に何度もくしゃみをして、翌日にはさらにひどくなり、夜の間に鼻水をかんだティッシュが大量にゴミ箱に捨ててあるのに気づき、翌朝には鼻がつまって口で呼吸をし、咳が止まらず、気分が悪そうだったら、医者のところに連れていくだろう。それと同じように、あなたがヘビを注意深く観察していれば、ヘビが病気になった時にも、その症状の進行具合に気がつくだろう。

 呼吸器系の問題は必ずしも病理学的な問題とは限らないということも忘れてはならない。その原因は環境的なものかもしれない。ヘビのケージが乾燥しすぎていないかどうかチェックすること。何らかの匂いが肺の内壁に刺激を与え、ヘビに影響を与えている場合もある。しかし、環境的な原因を特定することができず、ヘビの症状が改善しないようなら、ヘビを獣医のところに連れて行くように。

 呼吸器系に問題のあるヘビは必ず獣医のところに連れて行かなければならない。繰り返して書いておこう。呼吸器疾患は、ペットのボールパイソンのもっとも一般的な死亡原因の一つである。呼吸器疾患に陥ったヘビには、獣医が提供するプロの知識と治療が必要である。

 ボールパイソンには、ごく稀に気管軟骨に軟骨腫(腫瘍)が発生することがある。この病気の症状は、呼吸器疾患の症状とよく似ている。軟骨腫は気管輪のなかで成長し、少しずつ気道を塞いでしまう。レントゲン写真や内視鏡を使うと、その塊を見ることができる。時には、口のなかの声門を通して軟骨腫が目視できる場合もある。この病気の発生率は低いが、経験豊富な爬虫類の獣医なら一度は目にしたことがあるだろう。この病気をうまく治療する方法はない。

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