Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

健康問題(続き)

口内炎

 マウスロットと呼ばれている状態の正式名称は、口内炎である。我々が若かった頃は、ヘビたちが致死性の口内炎になってしまうのではないかと恐れていたものである。理由はよくわからないが、30年以上前には、口内炎は非常によくおきる病気だった(少なくとも我々はそう思っていた)。現在においても、爬虫類繁殖の文献のなかでは、飼い主が直面するであろう健康問題として議論されていることも多い。実際には、口内炎は稀な病気である。我々は重度の口内炎をもう何年も見ていない。

 ほとんどの場合、口内炎は赤くなった鼻先と同じように、それ自体で独自に発生する症状・病気ではない。口内炎はほとんど必ず飼育環境の問題、あるいはその他の健康問題の一症状である。そうした問題を改善・治療すれば、口内炎もなくなるはずである。

 我々が観察したパイソン種において一番よくある口に関するトラブルの原因は、歯のぐらつきである。歯が歯茎のなかに押し込まれたために、炎症と腫れをひきおこしてしまったものである。ヘビは常に歯が生え変わる生物であり、ケージ内をうろついて角の部分を鼻先でつついているパイソンは、歯の一つが歯茎の奥に押し込まれて感染してしまう場合があるということを忘れてはならない。しかし、ヘビが本当に不機嫌なら、ケージに押しつける力が非常に強いので、歯ではなく、鼻先や歯茎のほうに傷がついて炎症をおこすはずである。

 病気のヘビ・ストレスを感じているヘビ・不幸なヘビは、免疫反応が弱まっている可能性がある。口のなかに腫れ物や感染ができるかもしれないが、環境が改善されれば、それも消えるだろう。また、口内炎は呼吸器疾患の兆候を示している場合もある。当初口内炎だと思われていたものが、舌鞘にできた腫瘍、あるいは唾液腺の腫れや感染であると判明したケースもある。しかし、ボールパイソンの飼育において、このような病気は全て、めったに発生するものではない。

 ヘビが口内炎になると、口のなかにある腫れ物が大きくなって、口がぽっかりと開いてしまうので、すぐに口内炎だとわかる。くわしく調べると、ヘビは口呼吸をしているから口を開けているのではなく、文字通り口を閉じることができないから、結果として口で呼吸しているのだということがわかる。こうした場合には、我々は楔(ウェッジ)形の道具を使って口をこじ開けて、患部をくわしく調べることにしている。

 多くの場合、患部をくわしく調べると、腫れ物には中心点があることがわかる。そこには膿が詰まっていそうなのだが、実際には膿はない。ヘビは膿を作らないからだ。その代わり、感染した部分には、白いチーズ状の物質が詰まっている。それは見た目も手触りも、やわらかいチーズそっくりである。我々は先のとがったメスで患部を切り裂き、ピンセットを使ってチーズ状の物質を取り除き、それと同時に、傷口のなかに歯がないかどうかをチェックする。その後、消毒薬で傷口を数回洗浄する。通常はそれ以上問題がおこることもなく、症状は消え、1〜2日後には餌を与えている。

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