Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P265  葬式

 ヘビが死んだ時の、死体の適切な処理方法について時々聞かれることがある。いくつかの方法があるが、まずはじめに、我々がお薦めしない方法を書いておこう。

 死んだヘビを、隣人の車の運転席に置いてはいけない。

 ルームメイトの枕の下に置いてはいけない。

 道路を渡っていた時に轢き殺されたかのように見せかけて、道路の真ん中に置き去りにしてはいけない。

 失礼。もしあなたが大事なヘビをつい最近亡くしたばかりだとしたら、こうしたブラックユーモアは冷酷に聞こえるかもしれない。しかし、前述した“やってはならない”ことは、全て実際におきたことである。生きたヘビや死んだヘビを使って、世間の人のヘビに対する恐怖心をもてあそぶような行為は、百害あって一利なしだということを、全ての飼い主は肝に銘じてもらいたい。こうしたジョークやいたずらは、笑いとどっきりだけを目的にしたものであっても、ヘビに対する攻撃を煽り、ヘビの飼い主に対しても強い嫌悪感を抱かせるものである。生きていようと死んでいようと、あなたのヘビに対して責任ある行動をとるように。あなたの行為が他のヘビの飼い主に直接影響を与える場合があることを忘れてはならない。

 地方自治体によっては、動物の死体の処理が厳密に決められているところもある。ヘビの死体を処理する前に、市・郡・州の法律に違反していないかどうか確認するのがいいだろう。地元の動物管理局に電話して聞いてみるといい。

 ボールパイソンの死体を処理するもっとも一般的な方法は、二重(あるいは三重)にしたゴミ袋に死体を入れて、埋め立て用のゴミとして出すことだろう。死んだヘビを裏庭に埋めて、永遠の眠りにつかせることもできる。あなたが望めば、ペット用の墓地で火葬や埋葬にしてもらうこともできる。

 ヘビの死体を他の動物が食べられるように、自然の野山に持ち出したり、道路の脇に捨てたりしてはいけない。こうした方法にはいくつかの問題点があり、そのうちの一つは、古い死骸を見つけ出す能力に長けた犬が、それを自宅に持ち帰ってしまうことである。すると、玄関先に大きなヘビの死骸があるのを見つけた犬の飼い主を大いに驚かせることになってしまう。

 死因を特定するために検死をおこなう必要がある場合は、ヘビは冷凍せずに、できるだけ急いで獣医や病理学者のところに輸送しなければならない。ヘビの死体は(特に内臓が)すぐに腐敗してしまうので、死亡時刻と検死時刻との差が開けば開くほど、内臓の状態や、生存時のヘビの体内にいた微生物を特定することが難しくなる。

 ヘビの死体を保存する必要がある場合は、冷凍することもできる。いい状態で長期間保存しておきたいなら、氷漬けにして保存すべきである。死んだヘビを輸送する場合は(飼い主の元へ返却するような場合)、ヘビを冷凍して、小さなドライアイスを詰めた断熱材の箱に入れて、宅配便で送ることもできる。

 また、10%のホルマリン溶液のなかに浸けて、ヘビを保存することもできる。ホルマリンはホルムアルデヒドの水溶液であり、獣医から購入することができる。たとえば100mlのホルマリンと900mlの水を混合すれば、正しい濃度の溶液を調合することができる。

 10%のホルマリン溶液はヘビの皮膚に浸透しないので、腐敗を防ぐためには、大型注射器を使ってヘビの筋肉組織と体腔全体にホルマリン溶液をたっぷりと注射するか、メスや一枚刃のカミソリを使って、ヘビの胴体に沿って腹部全体を切開しなければならない。注射や切開の作業を終えたら、ヘビを望みどおりの形にして(通常は、ガラス瓶のなかで上下逆さまにとぐろを巻いている)、10%のホルマリン溶液に浸す。1週間後、溶液を捨てて、ヘビの体全部が完全に沈むまで、新しい10%のホルマリン溶液を入れる。注意しておきたいのは、ホルマリンは不快で有毒な臭気を発生させるので、通気性のよい場所で作業をするように。また、ホルマリンには発ガン性があることが知られているので、取り扱いには十分気をつけるように。最低限、ゴムの手袋をつけること。うまく保存されたヘビはきちんとケアすれば、数百年でも保存可能である。

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