Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

孵卵箱と孵卵用床材(続き)

湿度

 孵卵用の床材を使用するポイントは、高い湿度を持ちながらも、それと同時に、ボールパイソンの卵を水で濡らしてはならないような、そんな環境を作り出すことにある。ボールパイソンの卵は濡れた表面の上に置いてはならないし、卵の上に水滴が落ちてくるのもよくない。しかし、湿度の高い場所に置かなければならない。これは魔法でも何でもない。卵の周囲には水や湿った物があってもいいが、卵そのものは乾いた表面の上になければならない。そうしないと、卵を失うことになる。

 孵卵時の大原則となる注意点をはっきりと書いたが、あなたが卵の周辺の水に対して神経過敏になる前に、もう少し説明を追加しておこう。もし卵の上に水滴が1〜2滴落ちても、ペーパータオルでそっと拭き取れば、卵は大丈夫である。仕方のない場合には、我々は卵を水道水で洗い流して、拭いて水気を取り、さらに乾かすためにしばらく孵卵箱の外に置いておいたことがあるが、それでも卵は無事に孵化した。卵を水道水で洗い流すことを薦めたりはしないが、我々が言いたいのは、卵を常に濡れた状態にしておくことが危険だということである。

 我々は孵卵時の湿度を計測していない。信頼できる湿度計がないからだ。我々の観察したところ、ボールパイソンの卵は、孵卵箱内の湿度がほぼ100%に近い状態から、だいたい75%くらいまでの範囲内で孵化するようである。

 湿度が適切かどうかを判断する簡単な方法は、卵の重さを量ることである。理想的なヘビ飼育室ならば、誤差1グラム以内の正確な重量計があるはずであり、こういう時こそ重量計を使うべきである。産卵した時に卵の重さを量り、1週間後にまた量り、卵の形が変わった(大きくなったり小さくなったり)ことに気づいたら、何がおきているのかを確認するためにもう一度卵の重さを量ること。別の項で、卵はとても頑丈だと書いたことをおぼえているだろうか。卵はさまざまな取り扱いに耐えることができる。重さを量ることぐらいは何の問題もないだろう。

 重さを量るために孵卵器から卵を取り出しても問題はないだろうが、そこには卵の取り扱い以上に危険な要素が存在している。卵を孵卵器の外へ長時間出したままにして、卵の温度を下げてはならない。実際には、少しくらいの間なら、卵の温度が下がっても大丈夫である。危険なのは、次のような場合である。温度の下がった卵を、温かくて湿気のある孵卵箱のなかに戻すと、卵の表面に結露ができることがあり、その結露が問題をひきおこすことがある。こうした可能性がある場合、我々は卵を元の場所に戻す時に、その上に清潔で乾いたペーパータオルを置くようにしている。こうすると、ペーパータオルがクッション役となって、卵が結露することなく元の温度に戻るようである。1〜2時間後に、孵卵箱からペーパータオルを取り出せばよい。

 孵卵器、孵卵箱、孵卵用床材の全てが完璧な状態になっていれば、ボールパイソンの卵(クラッチ)は、孵卵期間の最初の30〜35日間は、ほとんど重さが変わらない。実際には、重さの変化がマイナス10%〜プラス40%の範囲内にあれば大丈夫である。そして、孵卵期間の最後の3週間で、卵は約10〜20%軽くなるものである。

 

温度

 我々はかなり一定した温度範囲でボールパイソンの卵を孵化させている。その温度とは31.5〜32℃で、54〜56日目には孵化が始まる。今まで我々が孵化に成功した温度範囲は30〜33℃である。ガーナのボールパイソンの輸出業者は、ボールパイソンの卵を38℃の温度で孵化させて、高い成功率をおさめている。27℃の温度で97日間孵卵させた結果、ボールパイソンの孵化に成功したという記録もある。

 孵卵器を上手に使うコツは、温度のムラを作らないことである。孵卵器のなかの空気は、どこでも同じ(完全に同じ)温度でなければならない。そのためには、孵卵器内の空気を循環・混合・対流させる必要がある。そうしないと、空気の温度が均一にならない。複数の孵卵箱(湿気のある空間)を均等に温めたいのなら、温度を均一に保つことが一番重要である。温度にムラがあると結露ができ、結露ができると孵卵箱内の水分が動き回る。水分が動き回ると、孵卵箱内に濡れた部分と乾燥した部分ができることになる。

 結露があるかないかで、孵卵器の状態を知ることができる。温度が均一になっている時は、湿ったバーミキュライト(やその他の孵卵用床材)が入った孵卵箱のなかには結露は見られない。結露ができるのは、温度にムラがある場合だけである。温度にムラがあると、低い温度の表面に空気中の水分が凝固して結露ができる。

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