Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P191  齧歯類の世話

 子供たちにとって、ペットのヘビを飼育することで得られる一番貴重な体験は、ヘビが他の生き物を丸ごと食べる光景を観察することだと我々は信じている。ガータースネークにミミズを与えるにしろ、あるいは、ミズヘビに金魚を、ブタハナヘビにカエルを、コーンスネークにマウスを、ボールパイソンにラットを与えるにしろ、ヘビが捕食動物であり、捕食動物としての行動をすることは疑いようがない。もちろん、犬や猫も捕食動物である。犬や猫は、馬・牛・七面鳥・鶏・魚などを組み合わせたものを食べている。しかし、犬や猫の食事は缶に入っており、元々の動物の姿とは似ても似つかないものである。したがって、犬や猫を飼育している子供は、ヘビを飼育している子供に比べると、地球上の生命のしくみに関する知識が、かなり“甘く”修正されていると言わざるをえない。犬や猫を飼っている子供は、他の生き物に対する責任や思いやりを学ぶかもしれないが、生と死に関する知識、あるいは死がどのようにして生を支えるのかについては、ほとんど何も学ばないだろう。

 ヘビだけではなく、餌となる動物に対しても同じように基本的な責任を負わなければならないというのは、飼い主が学ぶべき教訓である。警告しておくが、もし死後の世界に永遠の懲罰というものがあるとするならば、餌となる動物を虐待した飼い主は、必ずそうした責め苦を受けることになるだろう。

 我々はマウスやラットが好きである。我々はこれまでの生涯で数千匹のヘビと過ごしてきたが、それと同時に、数十万匹のマウスやラットとも一緒に過ごしてきた。我々はマウスやラットに最大限のケアをおこなっているが、マウスやラットの世話をすることは、爬虫類繁殖に関わる付帯義務だと考えている。そして、それを楽しんでもいる。

 マウスやラットは、白松の切り屑やポプラの床材の上で飼うことができる。常に新鮮な水を用意しておく必要があるが、ペットショップで販売されているドリップ式の給水器を使えば簡単にできる。どちらも市販されているネズミ用のブロックタイプの餌を食べるし、中身がほぼ同じで値段の安い固形餌を飼料倉庫からまとめ買いすることもできる。マウスはミックスシード(複数の種子を混合した餌)を食べることができるが、ラットは種子をうまく消化できない。どちらも、いろいろな人間用の食べ物を食べることができる。どちらも30℃以上の温度にはうまく耐えられず、温度が低いほうが活動しやすい。

 マウスやラットを扱う際は、尻尾を持つとよい。尻尾の部分をやさしく(しかし、しっかりと)つまんで、動きを止めたり持ち上げるようにすれば、苦痛を与えることもなく、特にストレスを与えることもない。

 ボールパイソンには死んだネズミを与えるのが一番だというのが、我々の意見である。このことは、ヘビ以外の誰かがネズミを殺すということを意味している。ネズミを殺すことを楽しむ者はいないが、ヘビのために飼い主がその作業を引き受けなければならないこともある。ネズミを人道的に殺す容認された手法はいくつかある。脊椎の先端部から頭蓋骨を素早く分離させる方法や、一瞬で脳を破壊する方法、また、重い鈍器で一撃する方法などもある。これらはネズミの安楽死法として認められており、適切におこなえば、流血もなく、即死させることができる。

 誰かにお金を払ってその仕事をしてもらうこともできる。つまり、多くのペットショップやインターネットなどで、真空パックされた冷凍マウスやラットを買うことができるという意味である。ネズミを販売している業者のなかには、ネズミを瞬間冷凍して、個別に真空パックにして、ドライアイスを入れて、宅配便で配送してくれるところもある。

 飼い主のなかには、ガスを使ってネズミを殺す方法に賛成している者もいる。密閉した空間に高濃度の二酸化炭素ガスを注入して、ネズミの集団を窒息死させるというものである。二酸化炭素のボンベ(スプレー缶)はガス会社から購入することができ、固体(ドライアイス)としても購入できる。いつもこの方法を使っている飼い主は、普通は二酸化炭素のスプレー缶を使っている。ネズミを大きなゴミ箱のなかに入れ、ホースを使ってスプレー缶から二酸化炭素ガスをゴミ箱のなかに注入する。これは流血のない方法で、ネズミもすぐに死ぬ。しかし、我々の意見では、これは頸部の脱臼や鈍器の一撃ほど人道的ではないと思う。頸部の脱臼や鈍器の一撃による方法はネズミを即死させるが、二酸化炭素を使った方法では即死しないからだ。高濃度の二酸化炭素にさらされた哺乳類は、意識を失う直前、激しい窒息感を味わうものである。

 もっと人道的なのは一酸化炭素ガスを使うことだろう。一酸化炭素は眠気をひきおこす作用があるが、そうした理由により、人体にとっても非常に危険であり、市販はされていない。エーテルやその他の麻酔ガスを過剰投与されて、研究所で安楽死させられたネズミをヘビに与えるのは危険である。ネズミの体内に残留していた麻酔薬がヘビに吸収されてしまい、ヘビが麻酔状態になったり死亡してしまう可能性があるからだ。

 ネズミを冷凍して殺すのは、好ましい安楽死方法として認められていない。

ボールパイソン大百科 目次に戻る

トップページに戻る

inserted by FC2 system