Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P182  ボウルの持つ危険性

 水の入ったボウルが関係した事故の可能性について、あらかじめ警告しておきたい。これはちょっと気をつければ防ぐことができるものである。事故はこんなふうにしておきる。飼い主がボウルの水を交換しようとしてケージを開け、手を伸ばしてボウルを持ち上げる。ボウルをケージから取り出そうとした際、ボウルがケージのふちに当たり、飼い主の手がすべってケージのなかに落下し、ヘビに直撃して、その背骨を折ってしまった…。我々自身はこんな事故をおこしたことはないと断言したいところだが、残念ながら我々だけではなく、他にもこうした悲惨な事故をおこした人々はいるので、あえて取り上げてみたい。さいわい、こうした事故はしょっちゅうおきるわけではない。この事故が一番危険になるのは、ケージがガラスの水槽で、水の入ったボウルが重いセラミック製だった場合である。こうした事故がおきて、結果としてヘビを死亡させてしまわないためには、うまく設計された最新のケージと使い捨て可能な軽いボウルを使用することである。しかし、こうした事故がおきるかもしれないことをあらかじめ理解し、いつも適切な方法でケージの清掃をおこなうことによって、こうした事故を防ぐことは可能である。ボウル(あるいはケージのなかの重量物)を移動させる前には必ず、ヘビを外に出しておくというのもいい方法である。

 もう一つ警告しておきたいのは、時々使用されているのを見かけることがあるのだが、特に危険なタイプのボウルについてである。それは蓋のついたボウルで、蓋の真ん中に穴がくり抜いてあるものである(注:P182の写真参照)。こうしたボウルを使用する理由としてよく聞かされるのは、蓋があるので水の蒸発を防げるとか、蓋によってボウルが狭くなるのでヘビが安心して水浴びをすることができるというものである。穴を開けること自体の危険性もさることながら(これについては別項で説明している)、このタイプのボウルを使用することについては、我々は批判的な意見を持っている。

 第一に、水の蒸発を防ぐということは、水がボウルのなかに留まる時間がより長くなるということであり、飼い主はできるかぎり新鮮な水を保つのが困難になり、また、交換しなくてもいいという気になってくる。第二に、ほとんどのヘビはケージのなかで一番安全だと思われる場所で休む習性をもっている。したがって、こういったタイプのボウルのなかで水浴びをしているヘビの多くは、実際には、現在ケージのなかにある場所よりも、もっと安全な場所を探していると考えられる。時には、こうしたボウルのなかで長時間水浴びをしすぎた結果、皮膚の健康状態が損なわれてしまう場合もある。

 第三に(これがもっとも重要な点だが)、このタイプのボウルは致命的であり、ヘビにとっての死の罠となる可能性を秘めている。こうした問題がおきるのは、ヘビがボウルのなかに入り込もうとする時である。ヘビがボウルのなかに入ろうとすると、なかの水位が上昇し、やがて呼吸可能な空気のある場所が中央の穴の部分だけになってしまう。しかし、たいていのヘビは呼吸可能な空気を求めてボウルのふちの部分に移動しようとする。パニックに陥ったヘビは蓋の中央部分に頭を向けることなく、結果として溺れ死んでしまう。もちろんこうした悲惨な結果を予防することはできるが、そのためには、ボールパイソンの体の大きさと、それによって増える水の容積を正確に見積もるか、もしくは、ヘビが水に漬かっても水位がボウルの限界に達しないように、入れる水の量を調整する必要がある。たとえそうした対策をとったとしても、ヘビは成長するし、大きな餌を食べることもあるし、ケージのなかに別のヘビが加わることもある。実際、蓋のついたボウルのなかで、2匹のヘビが同時に溺れたケースも存在する。そういったわけで、蓋のついたボウルは使わないように強くお勧めする。

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