Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P162  安心保障

 ここで言う安心保障とは、適切なケージのなかでヘビが感じる安心感のことであり、ヘビ飼育室の防犯システムのことではない。安心感とは、ヘビがケージのなかで守られていると感じることのできる(あるいは感じるべき)状態を指すが、これはボールパイソンの飼育ケージの重要な要素であるにもかかわらず、あまり考慮されていない。一般的に、不安を感じているヘビはあまり餌を食べない。不安を感じているボールパイソンはケージのなかをうろつき回り、常に脱走しようとして、必死になって出口を探し求める場合がある。また、隠れ箱のなかに潜りこんで、決して出てこない場合もある。なかには隠れようとして、水の入ったボウルのなかに身を沈めたままのボールパイソンもおり、この場合には、重大な病気にかかってしまう可能性もある。要するに、不安を感じているボールパイソンは不幸なボールパイソンだと言える。彼らはたいてい鼻先が赤くなって、顔に擦り傷がついている。彼らはストレスを感じているが、そのストレスが彼らの健康を損なっているのだ。

 不安を感じているボールパイソンのストレスの度合いは一匹一匹によって異なるが、飼育繁殖されて育ったボールパイソンは、こうしたストレスを感じないことも多い。ペットとして飼育されている多くのボールパイソンの場合、特に学校の教室のペットとして生徒たちの注目を浴びながら育ったようなヘビの場合、どこにいようと何をしていようと、不安を感じることはないようだ。その一方、野生で捕獲した内気なボールパイソンは、人間の姿を見ただけで、数週間も餌を食べなくなることがある。しかし、飼い主がボールパイソンを適切に扱い、ちゃんとしたプライバシーを与えるなら、ヘビは常に安心感を抱くようになり、どんなに内気なヘビでも飼い主の存在に慣れてくれるだろう。

 通常、ヘビは周囲への露出が少ないほど安心感を得る。不安を感じているボールパイソンの場合、ヘビが快適に休息することのできる重量感のある隠れ箱を設置したり、ケージのなかに不透明の壁を作って人間から見える部分を少なくしたり、比較的静かな場所にケージを置いたりすることで、安心感を与えることができる。不安を感じているボールパイソンは、再び餌を食べはじめるようになるまで、手で触れないほうがよい。

 我々の経験から言うと、ボールパイソンはケージが大きいと不安を感じることもあるようだ。心やさしい飼い主が、ボールパイソンにできるだけ広い空間を与えようとしたものの、ボールパイソンのほうは広い空間がお気に召さないといった例も数多い。たいていのヘビはそのうちに大きなケージに慣れるのだが、時間がかかる場合もある。

 ボールパイソンのケージとして一番よく使われているのは、ガラス製の水槽だろう。水槽には数多くの欠点があるが、そのうちの一つは、ガラス製の水槽は他のどんなタイプのケージよりも安心感が少ないことである。四方がガラス張りで、スポットライトに照らされた空間に入れられたら、小さなボールパイソンは自分が注目の的になっているような気がすることだろう。ボールパイソンにとって、それはよいことではない。実際、ほとんどのボールパイソンは自分が隠れていて、(あなた見ているのではなく)あなた見ていることを好む生き物である。

 普通、あなたのヘビを幸福にするためには、ちょっとした障害物を作ればいいだけである。水槽の二面あるいは三面を紙で覆ってもいいだろう。新聞紙を軽く丸めてケージに入れておけば、不安を感じているヘビがその下に潜りこんで落ち着くだろう。もちろん、隠れ箱や別のタイプのシェルターを追加しても、ボールパイソンの安心感を高めてやることができる。

 通常、ボールパイソンは安心感を得るために全身を隠す必要はない。時には、小型の石をいくつか配置して、ボールパイソンが石の間に潜りこめるようにしておくだけで、ヘビが落ち着くようになることもある。また、適度な枝をケージの対角線上に立てかけるだけで、ヘビが安心する場合もある。ケージの装飾方法のなかには、見た目の美しさを向上させるだけでなく、それと同時にヘビの安心感も増大させるようなものも数多く存在している。

 ほとんどのボールパイソンは生まれつき内気な性格である。しかし、彼らの家であるケージのなかで安心感を得られれば、大胆で自信に満ちた性格へとすぐに変わる。飼い主であるあなたは、最初の頃は必要以上にヘビにプライバシーを与えたほうがいいかもしれない。けれど、ほとんどのボールパイソンは周囲の環境にすぐに慣れるものである。

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