Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P196  成長

 若いボールパイソンに餌を与える目的は、そのヘビを大きくするためである。つまり、孵化したばかりの赤ん坊から、幼体、亜成体、成体を経て、最終的には大型の成体へと成長させるためである。レアな変異体の赤ん坊を繁殖可能な段階にまで成長させようとしている飼い主にとっては、成長率は大いに気になるところだろう。飼育環境の条件に変化がないのなら、ヘビの成長率は、食べた餌の量とそのヘビの遺伝的な素質の関数であらわされる。爬虫類学者の間では、最適な成長率を決めるのが何かということに関して複数の意見が出されているが、我々は最適な成長率というものがどんなものかわからないし、そもそも、この件に関しては、誰も正確には答えられないのではないかと思う。

 我々はできるかぎり早くヘビを成長させようと実験したこともあるし、逆に、できるかぎり成長のスピードを抑えようとしたこともある。その結果わかったのは、最初の頃は大きさが異なっていても、4〜5歳になる頃には、体の構造やサイズはどれも似たようなものになるということだった。成長の早いボールパイソンは、あまり餌を食べずに成長が遅かったものに比べると、早い段階で繁殖をはじめるようだ。しかし、ヘビが繁殖するかどうかの基準は、サイズだけではない。また、急激な成長にはマイナス面もある。ボールパイソンの若いメスは、年をとったメスに比べると、産卵するときに問題をおこしやすいようだ。

 1994年に出版された『Ball Python Manual』のなかで、我々は3匹のメスのボールパイソンの成長率をグラフにして紹介した。孵化したばかりの頃は平均体重が56gだったのが、392日後には、3匹とも12回脱皮して、平均体重は1050gになっていた。これを人間にたとえて言うと、3.6kgで生まれた赤ん坊が13ヵ月後には68kgになっているようなものである。

 『Ball Python Manual』が出版されて以来、「うちのボールパイソンは、あのグラフに示されているサイズよりもはるかに小さい」という内容の電話を、心配した飼い主から何度もいただいた。我々はあのグラフをヘビの成長の上限ラインとして示したのだが、それが伝わらなかったようだ。現に、我々が飼育しているメスのボールパイソンのほとんどは、13ヶ月目の体重が400〜500gで、あのグラフで示されたヘビの体重のほぼ半分である。

 では、適切な成長率とはどんなものだろうか? それは個々のヘビによって異なる。我々はヘビの成長にともなう体重の変化を観察することによって、適切だと思われる成長率を維持している。ヘビの体重を正確に計測しているという意味ではない。プロの目で、それぞれのヘビをしっかりと見て、太っているかどうかを判断するということである。我々は個々のヘビが一生を通じて適切な体重を維持できるように努力をしているが、ヘビはどんどん成長していくものである。ヘビが若くて成長速度が速い場合には、適切な体重を維持するために餌をたくさん与えて、肥満にならない程度の余剰脂肪をつけさせるようにしている。若いボールパイソンには、最初の1年で70〜80回の餌を与えるようにしている。すでに成体になったボールパイソンは、成長率がずっと低くなる。成熟したヘビに対しては、年に20〜30回餌を与えるだけで適切な体重と体形を維持することができ、胴体の後半部分の皮膚やうろこが、(肥満のあまり)ピンと張りつめるようなことにはならないだろう。

 もしあなたが非常に大きなボールパイソンを育ててみたいというのなら、メスを飼うようにするといいだろう。メスはオスよりも大きくなるからだ。広い場所で飼うこと。大きな餌を与えること。大きな餌を食べて育ったボールパイソンは、同じ分量の小さな餌を食べて育ったボールパイソンよりも大きくなる。また、大型のボールパイソンは年をとったヘビだというのも一般的な事実である。大型のボールパイソンは、自然で捕獲された年齢不詳のものか、10歳以上の飼育繁殖されたものである。つまり、ボールパイソンが巨大になれるかどうかは、年齢が重要な要素となっている。

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