Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P214  ボールパイソンを繁殖させるいくつかの方法

 何もかもが順調に進めば、ニワトリの卵よりも少し大きいサイズの、真っ白なクラッチ(卵)ができるはずである。もちろん、知識として知っていることと、実際にそれを実現させることは、全く別物である。幸い、ボールパイソンが健康かつ幸福で、飼育環境が十分整っているなら、飼育繁殖させるのは難しいことではない。

 1980年代の初め以降、ボールパイソンの飼育繁殖に関する報告文献が、数多く出版されてきた。ほとんど全ての報告において、繁殖したヘビの飼育環境の条件は異なっていた。各著者は繁殖の成功(あるいは失敗)のカギをにぎっている条件を力説していたが、それらは著者によって異なっていた。

 我々は過去25年以上にわたって出版されてきたボールパイソンおよび他のパイソン種の飼育繁殖に関する文献をくわしく調べたが、おもしろいことに、この問題に関して著者の視点が変化してきていることに気づいた。1980年代の初頭には、パイソン種を飼育環境下でうまく繁殖させるというのは、重要かつ達成困難な研究課題だとみなされており、爬虫類学の多くの関係者から尊敬のまなざしで見られるような偉業だった。かつてはそうした風潮が一般的だったのだが、現在では、飼育繁殖に成功するのは、適切な飼育管理スケジュールの一部にすぎないとみなされるようになってきた。

 公正な言い方をするならば、たしかに昔はパイソン種を繁殖させるのが難しかった。もちろん、その理由の一部は、飼育繁殖に関する適切な情報が不足していたということである。それに当時は、「パイソン種は何度も予想通りに繁殖させるのが難しい」というのが公式見解として定着しており、ブリーダー自身もその考えに従って、最初からあきらめているようなところがあった。しかし、当時の飼育繁殖がうまくいかなかった最大の理由は、ほとんどのコレクションのほとんどの飼い主が、成体になってから自然捕獲された個体を使っていたことである。別の言い方をすると、当時のヘビは現在飼育繁殖に使われているヘビとは異なっていたのである。現在の飼い主は、はじめから成功を約束された状態で繁殖をはじめることができるようなものである。

 自然捕獲されたヘビを、飼育環境で繁殖させるのはきわめて難しいことがある。初期の爬虫類ブリーダーたちは、一つがいのパイソン種(ボールパイソンを含む)を繁殖させるのに、時には数年もかけて多大な労力を支払ってきた。我々自身も、そうした実例を知っている。ダラス動物園の爬虫類部門のスタッフは、1976〜1982年にかけて多くのパイソン種の飼育繁殖に多大な成功をおさめていたが、当時展示されていた3匹の自然捕獲されたボールパイソンだけは、どんなに努力しても繁殖させることはできなかった。

 ヘビのブリーダーの第一世代である多くの人々にとっては、その自尊心を傷つけるような発言かもしれないが、ボールパイソンの繁殖はきわめて簡単なことだというのが現在の常識である。それは次のような事実を見れば、明らかであろう。ここ数年は、毎年、数千匹のボールパイソンが飼育繁殖しているのである。小学校のクラスでさえボールパイソンを繁殖させており、繁殖に成功した飼い主は10歳の男の子からお祖母ちゃんまで、多岐に渡っている。

 我々が言いたいのは、ボールパイソンを繁殖させる方法はたくさんあるということだ。我々が知っているボールパイソンの繁殖の成功例は、その飼育条件がさまざまで、温度・餌の頻度・ケージの種類・昼夜の周期・その他の要素などがありとあらゆる組み合わせでおこなわれていた。もし飼い主が若い時から性的に成熟する時までボールパイソンを健康かつ幸福に育てることができたのなら、その飼い主はそのヘビをちゃんと繁殖させることができるだろう。人工的な環境で育てられた健康で幸福なボールパイソンは、幅広い環境のなかで繁殖することができるだろう。

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