Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

健康問題(続き)

脱ヘミペニス

 脱ヘミペニスは、めったにないことである。我々は脱ヘミペニス状態になったボールパイソンを見たことがない。しかし、他の人のところでボールパイソンが脱ヘミペニスになったという緊急のEメールや電話を受けとることがたまにある。脱ヘミペニスとは、ヘミペニスが胴体のなかに戻らなくなってしまうことである。通常は、交尾の際におきた外傷が原因となっている。次のようなケースが典型的である。飼い主がケージのなかを見ると、うれしいことに、ボールパイソンのつがいが交尾をしていた。数時間後、飼い主が再びケージのなかを見ると、繁殖用の大切なオスヘビが腫れたヘミペニスの片方をひきずっているのを見て恐怖にかられるというものである。

 通常、脱ヘミペニスの状態は、ヘミペニスが膨れていることによってひきおこされる。交尾の間、ヘミペニスは膨張しているのだが、交尾が終わった後も、収縮しなくなってしまった状態である。この状態を招いた原因は、ヘミペニスの収縮筋、あるいは排泄腔の括約筋がダメージを受けたせいである。正確な原因が特定できない場合が一番多い。

 飼い主がほどこす治療法はいくつかあるが、そのままヘビを放っておいても自然に治ってしまうことも多いので、そうした治療法が実際に効果があるのかどうかを査定するのは難しい。一番よくおこなわれる家庭療法は、露出したヘミペニスにグラニュー糖や砂糖の粉末をふりかけることだろう。つまり、砂糖によって体液を吸い出し、ヘミペニスを縮小させて、体内に引っ込ませるという原理である。実際には、ヘミペニスを膨張させているのは血液であり、砂糖が血液を吸い出すようなことはないだろう。もしヘミペニスが12〜24時間以内に体内に戻らないなら、砂糖がヘミペニスの表面の皮膚にダメージを与えるおそれがある。そのため、我々は脱ヘミペニスに砂糖をふりかける方法をお薦めはしない。

 他のパイソン種における脱ヘミペニスの事例では、我々はヘビを(ビデのような)医療用洗浄器の浅い風呂につけたことがある(使用する洗浄液は、洗浄器のマニュアル通り)。この治療法をおこなえば、問題が解決した場合が多かった。繰り返すが、この問題は自然に治癒することも多いので、この方法が実際に治療効果があったのかどうかは判断するのが難しい。ヘミペニスが脱水症状になるのを防ぐ効果はあったと思われるし、少なくともマイナスの影響は与えていないと思う。

 飼い主が実質的に脱ヘミペニスを無視することに決めた事例も知っている。露出したヘミペニスはしぼんでしまい、やがて数ヵ月後には抜け落ちてしまったらしい。おもしろいことに、ヘミペニスは失われたわけではなく、ヘビは何らかの方法で再び一人前のヘミペニスを取り戻したという報告が複数の飼い主から寄せられている。ヘミペニスが再生するという科学的な報告はないので、この場合、ヘミペニスは体内に戻り、脱皮した後に残された厚くて硬い皮膚が、乾燥したヘミペニスのように見えたということではないかと推測される。我々の知る限り、ヘミペニスを露出したまま放っておくと、ほとんどの場合、ヘミペニスは失われてしまう。獣医ならば、脱ヘミペニスを切除するように薦めるかもしれない。

 ヘミペニスが一つしかなくても、ヘビはちゃんと交尾できる。しかし、尻尾の先端がないオスヘビは、通常ヘミペニスを使うことができず、実質的に交尾ができない体になってしまう。繁殖用のヘビを求めているブリーダーは、尻尾の切れたオスヘビは避けること。

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