Hebidas ヘビダス  ボールパイソン大百科

P131  健康状態のチェック方法

 さて、あなたはボールパイソンを飼おうと思っていて、何匹か良いヘビを見つけ、そのなかから1匹を選ぶことにした。では、ボールパイソンの健康状態を知るにはどうすればいいのだろうか? 一般的にボールパイソンは健康なヘビであり、店で販売されているボールパイソンのほとんどは健康である。あなたが買おうとしているボールパイソンが健康体だという確率はきわめて高い。健康なボールパイソンは、とぐろを巻いていない時には、背中を上にした普通の姿勢で、ゆったりとしている。健康なボールパイソンは、きちんと調和のとれた動き方をする。健康なボールパイソンの皮膚は、見た目もきれいで手触りも良い。健康なボールパイソンの目は透明感があって、左右とも同じサイズで、均等な明るさをしていて、瞳孔の広がり具合も左右とも同じである。健康なボールパイソンは、チョロチョロと少しだけ舌を出し入れする(たいていのボールパイソンは、他のパイソン種のように、大きくて長い舌を見せるようなことはしない)。健康なボールパイソンの鼻孔のまわりは清潔である。健康なボールパイソンの口はしっかりと閉じていて、上唇と下唇が重なる部分は清潔で、濡れた(あるいは乾いた)唾や痰がついていない。

 健康なボールパイソンの体を調べる場合は、背中の中心部に沿って流れている脊椎のラインに注目するように。そこに瘤やしこりがあってはならない。細い首から太い胴体にかけての変化もなめらかで、左右の均整がとれていなければならない。また、胴体の側面に窪みがあってもならない。どんな年齢であれ、健康なボールパイソンは、比較的肉づきがよく、適度な重さを持っているものである。

 時として、内気な性格のボールパイソンは、あなたが調べようとすると、しっかりとボール状に丸まろうとすることがある。健康なボールパイソンはとても固いボール状になって、頭を見ることが難しい場合がある。顔をよく見ようとして、とぐろをいじくり回した時でも、ヘビは頭を胴体をうまく動かして、顔を隠してしまう。とぐろを巻いていない状態のボールパイソンを調べるというのは良い考えだが、絶対に必要というわけではない。普通は、とぐろを巻いたボールパイソンをしばらくの間やさしく持ち続けていれば、やがてとぐろをほどいて、よく観察できるようになるものである。しかし、なかには(特に自然捕獲された成体の場合は)あなたがあきらめるまで、ずっととぐろを巻いている個体もいるだろう。

 

P131  外部寄生虫のチェック法

 外部寄生虫とは、宿主の体の表面で生きている寄生虫のことである。ボールパイソンの皮膚の上で一番よく発見される外部寄生虫は、ダニ(tick)とヘビダニ(snake mite)の2種類である。ダニがいるのは、自然捕獲されたボールパイソン、もしくは、自然捕獲されたボールパイソンと一緒のケージにいた(あるいは、その近くにいた)ボールパイソンだけである。飼育環境においては、ダニが繁殖することはほとんどなく、ダニがペットのヘビの間に蔓延することはない。

 ダニは平べったい体をした8本脚のクモ類で、ヘビのうろこの間の柔らかい皮膚のところに、しっかりと噛みついていることが多い。たいていのダニは、張りついているうろこと大体同じ大きさをしている。つまり、小型のヘビには小型のダニが、大型のヘビには大型のダニが見られるということである。

 飼育の観点から言うと、ダニは除去しやすく、面倒なものではない。ダニに関する文献を読むと、間違った方法でダニを除去することの重大な危険性を指摘した文章が数多く見られ、ダニを除去するためのさまざまな方法が紹介されている。我々は単純に指やピンセットを使ってダニを取り除いているが、それによって問題がおきたことはない。ダニは丈夫な寄生虫であり、退治するのは難しいことがあるが、我々はゆっくりと押しつぶしたり、あるいは、もっと良い方法として、消毒用アルコールのなかに落として始末している。

 ボールパイソンのダニは、人間や犬にも寄生することが知られている。ただし、こうした事例は稀である。10年前には、輸入されたボールパイソンにダニの集団がついているのはよくあることだった。当時は、ボールパイソンの入った積荷を開封している輸入業者の従業員にダニがつくことも度々あったし、その近くに住む犬の体でダニが発見されることもあった。しかし、現在では、国内に入れられる前に、ボールパイソンの体からダニを除去する作業が義務づけられている。

 一方、ヘビダニの場合は、話は別である。ヘビダニも8本脚のクモ類の外部寄生虫だが、ダニよりもはるかに小さい。ヘビダニはボールパイソンだけでなく、他のどんなヘビにおいても寄生・繁殖できる。機会さえあれば、ヘビダニは飼育されている全てのヘビに伝染することもできる。ヘビダニはヘビ固有の寄生虫であり、人間や他のペットには感染しないことがわかっている。

 ヘビダニはヘビのケージ内でも簡単に繁殖でき、退治するのが非常に困難である。しかし、これから買おうとしているボールパイソンにヘビダニが寄生しているかどうかを判別することができれば、その後の仕事とストレスを大きく減らすことができるだろう。

 一般的に言って、少数のヘビダニが寄生している程度なら、ヘビにとっては我慢できる範囲内だと言える。ヘビダニがヘビに噛みついて、ヘビの血と血清をむさぼると、ヘビはムズムズとした不快感を感じる。その結果、噛まれたヘビは常に動き回ったり、水の入ったボウルに浸かるようになる。しかし、もし何も手を打たずに放っておいたら、ケージのなかのヘビダニの数は増大し、ヘビが貧血に陥って死に至る場合もある。

 ヘビダニはケージからケージへと移動し、時には封入体疾患(IBD)やパラミクソウイルスといった病気の媒介物となることもある。このように、新たに入手したボールパイソンがヘビダニに寄生されており、重病に感染していて、それが後で発症するといった可能性も存在している。

 ヘビダニの対処法については、本書の後の章でくわしく解説している。ここでは、これから買おうとしているヘビにヘビダニが寄生していないかどうか、注意深く調べるようにということだけ述べておく。基本的には、ヘビの胴体の上で動いている小さな生物を探せばよい。若いヘビダニは色の薄い半透明の生物で、小さすぎてほとんど見えないくらいである。実際、ヘビダニの存在を確認できるのは、暗色のうろこの上を移動している時だけである。成長したヘビダニはピンの頭ほどの大きさで、暗い色をしている。ヘビの皮膚の上を動き回っているのが観察できる時もあるが、うろこの間に張りついていることのほうが多い。一般的に言って、ヘビダニの成体は、ボールパイソンの顎や喉の白いうろこの間で、黒い点として見える場合が多い。ヘビダニはヘビの目のまわりの空間を特に好む。実際、目のまわりには小さな谷間があって、ヘビダニ(の集団)が入り込むことができる。ヘビダニに寄生されたボールパイソンの目は、縁の部分が腫れてしまうが、それは柔らかい皮膚に寄生したヘビダニの存在によって炎症をおこしてしまうからである。

 ヘビダニがいるかどうかのもう一つの判別法は、白いティッシュペーパー(あるいはペーパータオルやハンカチ)を、ボールパイソンの首のまわりに巻きつけ、それを胴体に沿って滑らせることである。その後、ティッシュペーパーを開いて、小さな動く物体がないかどうか注意深く探せばよい。

 同じケージのなかに複数のボールパイソンがいて、そのなかの1匹のヘビにヘビダニを1匹だけ見つけたとしたら、他の全てのヘビにもヘビダニが寄生していると考えたほうが無難である。たいていの場合、ペットショップでヘビを吟味している際に、たった1匹でもヘビダニを見つけたら、ベテランの飼い主ならば、そのヘビを買わないだろう。けれど、本当に欲しいヘビにヘビダニが寄生していたとしたら、少なくとも寄生虫が存在しているという事実を前もって知ることはできるだろう。前もって知っていれば、前もって準備することができる。ヘビからヘビダニを駆除することは可能であり、それは本書の後の章で解説している。新しいボールパイソンを入手する際には、必ずヘビダニがいないかどうかくわしく調べるように。

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